満足度★★★★
鑑賞日2017/01/18 (水)
価格3,000円
18日午後、下北沢のOFF・OFFシアターで上演された桃尻犬冬の公演『メロン農家の罠』の千穐楽を観に行った。これは、知人の役者・嶋谷佳恵が出演していた関係からである。
これまで幾つも舞台を観てきたが、この舞台のようにインパクトのあるタイトルとフライヤーのデザインは初めて。どちらかというとコメディー的な内容なのかと思ったのだが、確かに笑える場面も数々あったが、本質的にはかなりシリアスな内容であり、上演時間95分が短く感じられた秀作の舞台であった。
話の中心は、幼くして両親を亡くした1男2女の兄弟が営むメロン農家・安喰一家。まぁ、次女は小五の設定なので実際には農業に従事しているわけではないが、この次女・乃愛琉(ノエルと読ませる)が舞台の重要な存在となる。10年間もメロンを盗まれている安喰一家には、中国人従業員・劉がいて、毎年メロン泥棒退治の仕掛けを作っている。安喰家の長女・美津子を好く近所の山岸は結局は結婚することになるが、美津子は堀淵という一家と付き合いのある男性と浮気もしてる複雑状況。安喰家の大黒柱・怜音(レオンと読ませる)は、人の良い実直な男で、いや実直すぎて合コンでも相手ができない。そんな一家に嵐を巻き起こすのが次女の乃愛琉。万引きし、その理由の本音を兄にぶつけ、兄も本音を吐露する。結局、一家三人の本音のぶつかり合いでギスギスしたことになるが、メロン泥棒が捕まり(仕掛けで目に怪我をさせてしまうが…)、次女がメロン畑にガソリンをまいて燃やしてしまうという行動を通じて、一家に絆が戻ってくる。
本音のぶつけ合いシーンは時に絶叫ありのかなりシリアスなもので、観ていて心が締め付けられたり…。所々で織り込まれた笑いのシーンがその緊張感をほぐしてくれる。
役者としては、難しい次女役の徳橋みのりの演技が秀逸。長男役の森崎健吾と長女役の嶋谷佳恵の熱演も光る。
脇役として、乃愛琉が万引きをするCDショップの夫婦も登場して、舞台に緩やかな風を注ぎ込んでいた。
舞台を大小2面に分けて進行させる演出は、小劇場の舞台の使い方としては上手かった。脚本も変な小細工を使わず正面から勝負を挑んでいて気に入った。この桃尻犬という劇団(ユニット?)、なかなかの実力とみた、次回作も観てみたい。