満足度★★★★
観終わって、改めて『きんとと』というタイトルがしみた。
娼館いづみやに暮らす男女と金魚鉢の中の金魚。鮮やかな紅の着物をまとい長い帯を垂らして暮らす、耕したり紡いだり組み立てたり、そういう仕事には向かない、いや向かない以前に試す機会さえ与えられたことのない人々が、可憐に泳ぐ小さな生き物と重なる。閉鎖された小さな世界で、登場人物それぞれが切実な想いを抱いている様子が繊細に描かれていく。
行き場のないいくつもの想いが行き交いすれ違う様子に、観ていてやるせなくなってしまう。それでも、すべてを燃やし尽くす炎のあとで、ほのめかされる結末に救いがあった。
夜に薫る花のような、濃密な物語。会場をあとにするとき、きっと夢から醒めたような顔をしていたに違いない。