満足度★★★★★
鑑賞日2016/08/03 (水)
神社の参道に連なるお団子屋さんを舞台にした、やわらかな土地の訛りが美しく響く物語。三人姉妹のそれぞれの個性やお母さんのチャーミングさ。蜜に想いを寄せる梢の、電話での母親との温かいやり取り。蜜の幼馴染である鵜澤の言葉にしきれない誠実さ。兄の死に際したときの久保木の表情。ミュー研メンバーとの懐かしいやり取り。劇中劇での、昔の洋画の吹き替えめいて不自然なくらい歯切れのいい台詞。
登場人物の一人ひとり、劇中劇の場面のあれこれ。語り始めたらキリがない。
しかも今回はミュージカルということで、上手な方の歌はもちろん、場面やキャラクターの雰囲気に合わせた素朴な歌声も、さまざまな場面で演奏されるたくさんの楽器も、雨戸の開け立てやカエルの声などの効果音を生でつけていく様子も、それぞれに物語を彩っていた。
パンフレットや台本にも歌詞が記されていて、読んでいると、場面とともに自然にメロディが浮かんでくるのだ。
たくさんの歌と楽器に彩られた物語は、土地の訛りや華やかな稚児行列や剣舞、お囃子の響きなどに支えられて、ひとつの歴史を持った架空の町を浮かび上がらせていく。
訛りも桜の咲く季節も違う土地から来た人にも、他所の土地に行ってしまった人たちにも、そして小堀屋の人々にも季節は巡り、また新しい物語を連れてくるのだろうか。
あの町で、また彼女たちに出逢える日が待ち遠しい。