「ロストマンブルース」 公演情報 SANETTY Produce「「ロストマンブルース」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2016/12/21 (水)

    死ぬとはどういうこと、という問いかけから物語は始まる。その人の存在を忘れてしまうこと。このタイトル「ロストマンブルース」は、音楽を忘れたらどうなる。世の中、変わるのだろうか。
    謎めいた人物が登場するたびに、話が増幅するようで思わず身を乗り出す。この後、どう展開するのか興味は尽きない。そして全てが明らかになった時、人の思いの深さを知ることになる。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台になるのがシェリーというライブハウスだった場所。上手側奥にドラム・ピアノが並び、下手側はカウンターと棚。中央に2セットの丸テーブルに赤い椅子。床は赤黒の市松模様という、いかにも音楽に所縁がある雰囲気が漂う。

    物語の登場人物は、主人公の朝倉一義(夢麻呂サン)を除き、全員が劇中芝居をしているという設定である。朝倉は1992年に交通事故に遭い、記憶障害(喪失)になっている。何故か事故に遭った同じ日、毎年このライブハウスを訪ねてくる。
    現在は2016年、事故から24年経つが本人の意識は当時(24年前)のままである。実はこのライブハウスも随分前に倒産(閉店)しており、現在はコンビニになっている。

    この事実(朝倉が訪ねてくること)に元店長は、ビルオーナーの承諾を得てコンビニを一時的に元のライブハウスに改装している。店内は張りぼて仕様である。事故当時4歳,2歳だった娘も28歳,26歳に成長した。そして妻の名を忘れ、娘を妻と勘違いし出す。担当医が記憶の認識をさせる診療の一環として考えたのが、今回の芝居(バンド音楽)によって「記憶の覚醒」を図るもの。その結果...。人は張りぼてではなく善人ばかり。羨ましい家族、友人関係である。
    1992年、尾崎豊の歌を聞いてきた自分には懐かしい。同時代もさることながら、同じ思い出の地(場所)を共有する人々には、そこはいつまでも在ってほしいものだろう。

    冒頭、間もなく無くなるライブハウスに訪れた中年のバンドマン。熱く語る音楽への思い...しかしその言葉とは裏腹に仕事があるのかどうか。今は過去を振り返るのでも、未来を夢見るのでもないような暮らしぶり。それでも何か...好きな音楽であることは間違いない。そのあがく姿が自分(観客)のそれぞれの場であがく姿と変わらないような気がする。あがいた先に安易な希望は見せないが、だからこそ最後にかすかに差す光に胸が熱くなる。

    物語は終盤まで「謎」だが、それが段々氷解していく過程に色々な伏線を張り巡らせている。確かにリアリティはないが、自分がその立場になったらどうするか、その問いが投げかけられているようで目が離せない。

    キャスト陣の演技、シーンの転換に応じコミカル、シリアルにと変幻自在。やはり親子の分かり合い、夫婦の貧しいながらも理解しあった仲。それが記憶障害で妻の名を呼ばれなくなる寂しさ、切なさ...ラストに小さな奇跡と大きな感動。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/12/22 17:28

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