弟の戦争 公演情報 劇団俳小「弟の戦争」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    強いメッセージの骨太作品
    強い問題意識(テーマ)を感じる。その観せ方はサスペンス風にして最後まで飽きさせない工夫をしている。多面的な描き方なのであろうか、少し分かり難いシーンもあったが、それでも事実をなぞり虚構の世界を重ね合わせた骨太作品という印象である。
    設定は、イギリスの中流家庭であるが、当時の日本の状況に重ね、さらに言えば今日の日本(人)の姿に重ねて合わせているようだ。
    (上演時間1時間45分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、建築現場で見かけるようなパイプ組で、2階部分を作り他(多)空間を創り出している。その1階部はイギリス・ヒギンズ家のリビングルーム。上手側にダイニングテーブル・椅子、下手側にソファーが置かれている。2階部はタイトルにある弟アンディ(=ラティーフ 駒形亘昭サン)の部屋である。

    梗概...1990年夏。イギリス・ヒギンズ家は兄弟2人で、兄のトム(町屋圭祐サン)と弟のフィギス。 兄は物分りが良くて、特に父を尊敬しているようだ。弟のフィギスは、物事(興味)に拘るタイプで、両親を困らせることもしばしばあった。 その弟が、ある時奇妙な言葉を喋りだし、 「自分はイラクの少年兵・ラティーフだ」と言い始める。
    冒頭、兄が心の友人として大切にするフィギス...その姿は紗幕に映し出された陰影のみで、実体は定かではない。この虚構とも思えるよう男は、不定期に現れ、その出現は何を意味しているのかが分かり難かった。精神科医が登場するが、劇中での描きはアンディとラティーフという分身(ドッペルゲンガー)のような感じもする。
    アンディ=ラティーフの体験とアナウンサーの実況中継が事実をなぞり、一方この夫婦の会話は、それぞれの主観や立場などの感情に傾く。事実と感情の衝突に観えるのは、TV画面を通じてもたらされる表面上の情報に基づくもの。人は実際、見聞きした体験の向こうにある出来事を想像することは難しい。そして湾岸戦争など、自分にはほとんど関係ないと...。
    物語のラスト、兄と弟の様子が逆転(もともと本当に「弟の戦争」か?)。兄の第三者的な行動の結果だとしたら怖い。対岸の火事をわが事のこととして捉えられない。平和を脅かす毒牙さえも傍観しそう。
    ただ描き過ぎて、観客への問い掛けなど余白があっても良かったのでは?

    脚本は明確なテーマを提示し、また演出は物語を飽きさせない工夫をしている。問題の所在は、市井(中流家庭)の人々…主に夫婦の会話で紡ぎ出され分かりやすい。それを体現させる役者陣の演技は見事であった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/12/12 19:50

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