満足度★★★★
「其ノ弐」に続き観劇
震災後の光景が重なった前作では、「能」の基本構造(死者が現前し生者が鎮魂する)の上に「村ごと消失した」現代の風景を重ねて印象的だったが、今作はまた随分それと風合いが異なった。科学的合理主義を推し進めて管理下に敷こうとする権力と、科学的知見を揺るがすような「遠野物語」の逸話をめぐって対立する「検閲」の場が舞台になっている。ユニークなのは柳田国男(に当たる人物)の検閲を担当する事になったのが大学の研究者である事。舞台は検閲が為される過去とも近未来とも見える「実世界」と、検証事例に扱われている遠野物語の逸話の「再現」を組み合わせた構成で、話は「議論」に収束して行く事になる。
遠野物語に収められた話は不可思議なもので、それがどこそこの村の二年前に死んだ某の話だったりする。科学・非科学の論争に流れるのは自然だろう。が、広くて深いテーマだけにこの題材にどうつなげるのか、難しいところだと思う。時代に対する作者の見方が反映する所でもあるが、少々一般的に思えたのが残念。