「ヴルルの島 」 公演情報 おぼんろ「「ヴルルの島 」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    おぼんろ らしさ
    寓話は記憶に残りやすい。神話や諺が長年人の心に残るのは、教訓的な要素が人々の経験・体験を通じて共感できるからではないだろうか。しかしそれは後知恵で追加されてくるもの。寓話はその神秘性も含め、律しきれない”もの”を植えつけるから時代を超えて残るという。

    おぼんろは、大人のための寓話を物語り続けている。本公演には色々な寓話...教訓的要素がちりばめられているが、すべてを救い上げることは難しい。この公演も例外ではなく、観念的要素が...それでも観客に訴えてくる力は見事。

    さて観劇したのは公演2日目であるが、語り部・末原拓馬氏が場内を見渡し、参加者(観客)が少ないのに驚いていた。自分も意外な気がしたが...。

    ネタバレBOX

    舞台セットは、昔々か若しくは遠い未来か、今現在か定かではない。もちろん場所も特定できない、一種の仮想世界である。その不可思議な情景をしっかり観せる。中央に花道、四方八方に小スペース。参加者の後方で演技をすることもあり、それによって物語は不可思議であり変幻自在に紡がれる。

    孤独な盗人は港に泊まっていた船に乗り込み、積み荷ごと船を奪おうとした。しかし、その船はゴミの島ヴルルへ向かう。島で盗人は、誰かに何かを贈りたいと願う怪物...壊れかけた軍用ロボットに出会う。そして、島にまつわる悲しく残酷な過去が...。盗人はこのロボットを”アゲタガリ”と呼び出した。
    この盗人が、この島に来るのは宿命であった。親との邂逅するような、しかしその真実は悲しい。

    おぼんろ の公演は、語り部の独特にして繊細な言葉(台詞)が瞬時のきらめきで表現される。その物語(セットも含め)は、観えるものだけではなく、底に幾つもの豊饒な層があり、その内にある力が参加者(観客)の心へ訴えてくる。夢・現実の区別なく儚い世界に漂う、その心地よさが魅力であろう。

    語り部は、毎公演とも熱演である。場内をところ狭しと駆け回り、時に参加者の後ろへ回り情景を紡ぐ。この走る動作は、当然息が上がるが、その結果”語る”が自然と離れ、(声なき)身体表現へ移行していく。そのダイナミックさが、今度は物語に意志を持たせて自走するようだ。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2016/12/04 13:53

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