満足度★★★★
約130分
タイトルは、内容にそぐわない現行のものではなく、『保育士たちの放課後』とでもしたほうが良かったのではないだろうか?
保育園のバックヤードを舞台に、保育士という“人間”たちを描き出すこの群像劇には、バルブ案出の上述タイトルのほうが似つかわしい。
そう思わせるくらい、保育士という職に就いた“人間”たちの煩悶や喜びがじつに細やかに描かれていた。
好感を持ったのは、取材で得たとおぼしき“保育士残酷物語”を全体にちりばめながらも、ただそれだけの“社会派ノンフィクション演劇”に終わらせず、作者・池内風の抱く“理想の保育士像”が投影された、夢があって前向きな物語に仕上がっているところ。
保育園は、ブラックワーク問題、教育問題、モンスターペアレント問題と、ニュース性の高い諸問題が凝縮された場所。商売っ気の強い者なら、保育園のそうした“暗部”を強調した救いのない話をこさえて話題作りをし、動員増を目論みそうなものであるが、池内風はそうはせず、現実を映すかたわら自身の夢をも織り込んだ、良い意味でのフィクションに仕立て上げた。
私はそこを評価したい。