はたらくおとこ 公演情報 阿佐ヶ谷スパイダース「はたらくおとこ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    どくどくする二時間
    「働きたい」生物である男たちは、「仕事」を与えられたのか、という設問に即して芝居を振り返ると、男はああして働いている=生きている。一つのあり方、とも見える。
    一風変わった「リンゴを作る」夢にこの指止まれで集まった男たちが、凋落した会社の建屋に今なお各様の事情により通い、定時まで「働いて」いる。ここでの目標は「リンゴ畑を成功させる」が順当だが、その目標に直行していない何かがあり、何でそうなっているのか判らないが人物らの奇妙な笑える行動の背後で「謎」という通奏低音になっている。そうしながらも、関係する人間たちによって事態は動いている。ただし、「事態」を深刻にしているのは登場人物の「どうでもいい」ミスや非見識だったりもしそうで、ある種の「問題」を純然と浮上させるでもない込み入ったドラマ進行の歩調。そして不条理性の深化は加速し、やがて悪夢の様相を呈してくる。このシフトが徐々に、積み重なるように為されるので、少し前には何を問題にしていたのかが思い出せないまま、「事態」に翻弄されて行く。

     芝居のオチに至る手前の最終局面の男らの行動が、また強烈で、男らに心情を寄せてその光景を見ると口に酸っぱい液が湧き出てくる。その前にも別の人物による類似の行動があるが、この異常さは何なんだ・・と思いながらも自分の正常さを明け渡してしまう。
     「それが一体何なのか」、についての答えをドラマ内部に意味を見出すのは難しい。ある種の飛躍を要求される。ドラマを超越した、ドラマ「外」の現実も俯瞰する目を求められ、その「物(体)」が象徴するものは何か、思いをめぐらすことになる。芝居上ではその「物」が何であるかは、最後まで判らないが。。

     「飛躍」についての説明は、戯曲上の仕掛けとして、最後に付けられる。だが、その時点では、直前までのあまりに毒々しげな光景の印象はすでに深く刻みつけられ、「意味」への問いは根を下ろしてしまっている。

     徐々に異常な事態に慣れて行く、感覚の麻痺がすすむ中で、「毒」の浸透を許してしまう・・。この芝居のようなグロテスクな事態は誇張だとしても、10年前には考えられなかった常識が、確かに、日本でも現実になっている。

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    2016/11/20 00:31

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