つややかに焦げてゆく 公演情報 Antikame?「つややかに焦げてゆく」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    繊細、微妙な作品
     開演前、女の子(女優)が紙を折って紙飛行機を作って飛ばした。

    ネタバレBOX

    この間にテープで前説が流れた。女の子は出来上がった紙飛行機を飛ばす。何でもギネス世界記録を作った折り方だという。女優の不器用云々のエクスキューズは謙遜なのか、それとも折り方が良いのか良く飛ぶ。さて、頃合いになると、紙飛行機を作っていた女優が前説を担当してくれたが、切れ目なしに開演。尺は結構長くて140分。無論、休憩はない。
     全編を拝見して、自分はカゲロウを意識した。周知の如くカゲロウは成虫になって息絶える迄僅かの時間しか生きることができない。その透き透った翅と薄黄緑色の体全体が光に透けてしまいそうな儚さを感じさせるが、成虫になる前の姿はアリジゴク。獰猛で禍々しい形態で、成虫とは真逆の印象を受ける。
    ところで本作の本質は、DNAの乗り物としての我らの生と解釈した。片や生命現象のプロトタイプとしての産む性、それに関与する性としての♂。これら二様の性の在り様にヴェールを掛けてお洒落に作られた作品と言えよう。
    具体的には、♀と♂とのヘテロセクシュアルな関係をベースに、以下説明する如く、冒険する少女を介在させて狂言回しで膨らませると共に、自信喪失女と自立独立系女を対話させることで、自信喪失女の身の上話を何気に語らせ、彼女の成長を極めて自然に漂泊させているなどである。
    付き合いの形式としては女店長と年上の男部下、家庭教師だった男と女子高生であった教え子、自信のない女と自首独立系キャリアウーマン、今まで勤めていた会社を辞めてチャレンジする若い女などの挿話が、入れ子構造を為し、通常なら出会わなかったであろう関係を築いてゆく。
    無論、♂の♀に対する関係に於いては、生命のプロトタイプである♀がメインで、♂は謂わば鉄砲玉のようなもの。だが、その鉄砲玉の哀しさ、不如意が持つ、生命力そのものに対する懼れ、戦きが恋に失敗した経験を示すことによって重さを増し、その重力から抜けられなくなった結果、♂は優柔不断になり、♀に対するアプローチが増々遠ざかってゆくのみならず、不断に遠のく姿を描いている点で興味深い。同時にこれら♂の弱点を励起し得なかった♀の包容力喪失、自意識ばかりで母性的な物を欠く嘆きをも描いている点で、この作家の喜劇的作品を書く才能の片鱗も見せている。何れにせよ、男女関係の微妙、綾が巧みに織りなされた繊細な作品を頗る静かなタッチで描いていた。
    だが偶々、自分の隣に座っていたバカ女が、スマホの電源を落とさずにいるばかりでなく、何度もチラチラ蛍光画面を見る。暗転で店長が長科白を言う間中ぺカぺカ点滅させているので、流石に「電源を切れ」と言ったら、次に出掛ける所があるので途中退場しなければならない、それで電源を切らないと居直っている。初めから分かっていることなら、腕時計をしてくるなり、100円ショップで目覚まし時計の小さいのを買ってくるなり、いくらでも方法はあるハズ。それをしてこなかったのならぺカぺカ点滅している液晶を掌で覆えばいいだけのこと。そんなことすらせずに他の観劇者に迷惑を掛ける権利等ないのである。こんな馬鹿に観劇の資格はない。

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    2016/11/16 04:08

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