月が大きく見えた日 公演情報 The Stone Age ブライアント「月が大きく見えた日」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ”逃げたい”本音
    “逃げたい”人間の本音を鋭く突いて、観ている側にも緊張感が伝わってくる。
    リアルな台詞の応酬に、同時進行で一緒に追いつめられて行く感じ。
    これまでとちょっと違った役どころの常連役者陣も新鮮でとても良かった。
    澤原剛生さんの“これって素なの?”と思うほどの挙動不審ぶりが自然で素晴らしい。
    痛々しいほど純粋な青年の存在が、作品の中で問題提起を体現している。
    同時に、シリアスな中に巧みに笑いを差し込んでくる間の良さも秀逸。

    ネタバレBOX

    舞台は古い団地の一室、正面にベランダと手すりが見える。
    その向こうに空が広がっている。
    中学教師の稲葉は、かつての自分と同じ天文少年の教え子から慕われていた。
    ところがその教え子が飛び降り自殺してしまう、それも稲葉の部屋から…。
    自分と同じ教師だった母が亡くなり、稲葉は母親の住んでいた団地に
    逃げるように引っ越してくる。
    亡くなった母の教え子や、自殺した少年の母親、付き合っている同僚の教師など
    様々な人々が訪れるうち、次第に真実が明らかになってくる…。

    長年貼ってあった紙の跡が残る壁など、団地の一室がリアルに再現された舞台。
    特に舞台正面に広がるベランダと手すり、その向こうに広がる空が強い印象を残す。
    照明によって空の色が変わり、時間の経過が見える。

    希望する天文学部のある学校へ進学するために、この中学に入った少年は
    いじめの事実を母親に知らせてくれるなと教師に口止めをする。
    相談された教師も、目的を持った彼ならいじめに屈することなく頑張れると期待した。
    効果的な助言もできない自分、その自分と天文学の話をすることがすべての少年、
    稲葉がそれらに向き合うことが重くて怖くて逃げていた結果、最悪の結末を迎えたのだ。

    稲葉役の末廣和也さん、「俺のしたことはそんなに悪い事ですか?」という
    この期に及んでまだそんなこと言ってる教師像が超リアル。

    亡き母の教え子でやはり飛び降り自殺を図ったという鰯駿介
    (イワシとう名字がすごい!)を演じた澤原剛生さん、
    その言葉にならない不安と緊張を見事に表現している。
    彼の生き方そのもののような、挙動不審と情緒不安定ぶりから
    怪しさを超えたピュアな心がビシビシ伝わってきて切なさでいっぱいになる。

    唯一信頼し相談していた教師が約束の日に留守をしたために、
    息子は絶望して自殺したのだと、教師を責める母親の狂気が本当に怖かった。
    演じる仁瓶あすかさんの“あたしも人のせいにしたい”という台詞に実感があって
    稲葉が「殺される」と感じるのがよくわかるような、
    緊張感と憎悪の表現が素晴らしい。

    稲葉の恋人である同僚教師役の徳永梓さん、稲葉よりも責任感が強く、
    自責の念から教師を辞める潔癖さがよく表れていた。
    可憐な容姿もとても素敵。

    彼らの間に入る学校の教頭先生(でしたっけ?)を演じたアフリカン寺越さん、
    いつもの熱血漢とは違って、上手く責任を回避して自分の立場を全うする、
    世渡り上手な先生が上手い。
    メリハリのある台詞のうち、力の抜けた台詞に要領の良さが出ていて良かった。

    解決策の見出せない問題に、敢えて向き合おうとする作者に拍手。
    天文学という浮世離れした趣味といい、ミステリアスなスーパームーンといい
    実に効果的なアイテムだった。









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    2016/11/10 00:52

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  • うさぎライター 様
    観てきたコメントありがとうございました。
    嬉しいお言葉の数々嬉しい限りです。
    わざわざ時間をさいて来てくださり本当に感謝です。
    御来場頂きありがとうございました!

    2016/11/10 02:05

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