震えた声はそこに落ちて 公演情報 劇団時間制作「震えた声はそこに落ちて」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    重い内容だが...【Bチーム】
    加害者は信用を回復することは難しい。それ以上に被害者の苦しみが癒える事は、難しい(ない)。未成年による犯罪...その更生を見据えつつも、第二の人生はその家族をも巻き込んで...。説明にある「言葉にする事の重みと、言葉にならない思いの強さ。 直向きに幸せを追い求める圧倒的な現代劇」の謳い文句通り、素晴らしい公演であった。

    敢えて明るく振舞う笑顔、しかしその顔は心底から笑っていない。そんな緊密した物語は飽きさせることなく力強く引っ張る。

    (上演時間1時間35分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、「たかまつ食堂」をしっかり作り込んでいた。中央奥にカウンター、客席側の上手・中央・下手側にテーブルセットが置かれている。この配置に誘拐・拉致監禁事件の加害者・被害者が上手・下手のテーブル席に座る。この対比構図による展開が物語を分かり易くしていたようだ。

    梗概...「たかまつ食堂」には3姉妹がおり、結婚している長女が夫と経営している。誘拐されたのは次女・神崎琴子(はらみかサン)。そのショックで声が出なくなる。家族はこの事件には触れず忘れることを選択していた。そこに別事件の加害者となっている女性が現れ、どうしたら被害者(家族)から許しの言葉がもらえるのか。そして誘拐した犯人や共犯者が現れ、被害者の心情に踏み込んでくる。

    本公演はドキュメンタリー風のように感じた。現実はもっと深刻であり、重たい展開にすることも出来たであろう。物語では監禁しても陵辱はしていない。犯人の誘拐動機...未成年者が逆恨みによる相手家族を困らせたい、そんな幼稚なもの。だから真に悪い事(犯罪)という認識が希薄である。もっと重たい事実を突き付けた場合、その先に見えるのは絶望。ここでは敢えて未来を見つめる方向にしている。

    その見守り役が、冒頭のラジオパーソナリティ・三郷岬(真砂尚子サン)である。その立場を示すのであろうか、被害者(家族)・加害者(家族)の間に介在するかのように中央テーブルかカウンターに座る。物語のリアリティよりも人間の心情を抉り出すという展開で観(魅)せることに主眼を持たせたところに好感が持てる。そしてラストもけっしてハッピーエンド、予定調和ではなく、むしろ自分を苦しめた行為、犯罪に対する”怒り”を加害者(家族)にぶつける。

    役者は熱演...登場人物のキャラクターや心情はしっかり体現しており、演技バランスもよい。また、舞台技術として照明はラストのスポットは印象付け、音響は棒説明にならないようラジオ番組を通じて興味を惹く。また食堂の出入り口を開けると外の喧騒・車の音が聞こえる。何気なく聞こえる「音」は今回テーマを意識しているのだろうか。この食堂内は事件を忘れるために立ち止まっている。その意味で非日常、対して外は日常の暮らしがイメージ出来る。とても細かいが効果的な演出であった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/11/09 18:28

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