治天ノ君【次回公演は来年5月!】 公演情報 劇団チョコレートケーキ「治天ノ君【次回公演は来年5月!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    骨太・重厚作品…素晴らしい!
    「天皇とは何か」劇中の台詞である。多くの臣下はその問いに答えられない。大隈重信だけが…。シンプルな舞台セットであるにも関わらず、骨太な内容を濃密な会話で紡いでいく。謁見の間であろうか、その場は緊張感に包まれているが、役者は生き活きと演じている。その一言ひと言の台詞に史実(フィクションと説明)が透けて見えてくる。明治はもちろん、大正時代も遠くなったと思っていたが、最近11月3日を「明治の日」にしようと祝日法改正運動が進められているらしい。
    本公演は、戦争と平和、天皇家における父親と息子、さらには疾病への偏見(新聞報道)など、現代に通じる問題提起をしている。

    ネタバレBOX

    舞台セットは、背凭れに菊の紋が入った椅子(玉座)、床に斜めに敷かれた緋絨毯が色鮮やか。上手側・下手側に出入り口、客席花道も利用し奥行き感を作り出す。

    物語は大正天皇が皇太子の時から、後の昭和天皇になる皇太子裕仁が摂政に就くまでを中心(1900年頃から1921年頃)に、その間に東宮輔導・有栖川宮威仁との親交、九条節子との結婚などのエピソードを交え、「天皇」を全うする姿を力強く描いた秀作。シンプルな舞台ゆえに、役者の演技力が重要であるが、全ての登場人物がその立場・役割を体現しており、圧倒的な存在感は観客(自分)の心を揺さぶる。明治天皇の感情を持たない姿、一方大正天皇の人間天皇に近いイメージの対比が国家・時代の違いを際立たせる。
    大隈重信曰く「(明治)天皇」とは近代日本が列強に対抗するため「神」として祀り上げた神棚のようなもの。奉るが拝みはしない、と辛辣に言い放つ。舞台は骨太い、重厚という雰囲気であるが、その中に反骨精神も垣間見える。

    皇太子裕仁によれば、父(大正天皇)は早く生まれすぎたかもしれないと。摂政(大正10年)から僅か25年で皇太子(昭和天皇)自らが”人間宣言”することになろうとは...。明治と昭和に挟まれた15年という短い期間(時代)、それは天皇の人柄を反映したかのような落ち着きと自由・解放さ、”大正デモクラシー”という言葉が表しているようだ。

    暗君と揶揄され、明治・昭和天皇のように誕生日(生まれたこと)が無かったことにされる。後世の国家・政治的な思惑で作られた偶像とも観て取れる。
    このような狭間(はざま)時代と取り上げにくい「天皇」を題材にする勇気というか大胆さに驚かされる。国家は体制・権力を守ることに専念し、人は歴史の中に消えていく。それは「天皇」であっても例外ではないのかもしれない、と強く感じつつ、改めて現代の色々な問題を考えるきっかけになった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/10/30 13:59

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