満足度★★★
何が刺さるかはその人次第
刺さるつもりで観に行って、しっかり刺さって帰って来ました。愛の話でもあり、欲の話でもあり、人格形成の話でもあった、ように思う。
陽一も、玲旺も自分に素直だったのだなぁ。大胆に見える芝居こそ、繊細だと感じたし、役者の人となりが感じられる気がした。
決して明るくはない物語を、暗くさせない管理人コンビ。愛らしかったなぁ。ここぞ!ってタイミングで登場して空気を変えて去っていく。だけど、その的確さがちょっと怖かったりもするね。
自分の欲望にまっすぐな公平が、拓海には羨ましかったのかな。一緒にいていいと、自己を認めてもらえる場所でもあった。(席が上手だったので)間近で見る拓海の独白が刺さったし共感した。"普通"に幸せになってくれればと望む親心を裏切っている点は、自分にも自覚があるから、そこは更に。
同僚3人組。私に一番近いのは珠希の立場だけれど、中身は誰だろう?智花の不満と不安も頭では理解出来るし、遼子の行動も納得するところがある。だけど、珠希の行動は私の中には皆無なので分からない。女って難しいなぁ。
遼子役の中村さん、どこかで見た事がある気がする…
玲旺の、盲目と純粋と狂気の境目が見えない。それが遼子にとっての救いであり悲劇だったから、境目なく遷移していく様子を驚く暇もなく受け入れていくしかなかった。そういう滑らかな演技だった。上手く表現出来るほど日本語が巧みでないのがもどかしい。ラストシーン、幸せ…なんだよね?
紗和のようには生きられないけれど、生きてみたいと思った。序盤は驚きの存在だったんだけど、中盤以降は羨ましく思ってた。紗和は拓海にも等しく愛情を向けていて、温かい人だった。
その一方、修が衝撃受けたり悩むのも分かるし、受けたショックを緩和しようと肉体を酷使するのも納得。
御園夫妻は、最初と中盤と最後の印象が全部違って、いろんな面で心が苦しくなった。言葉に表しにくいんだ、この二人は…。
麻奈美は大人しいだけの人かと思ったら、結構エグかったり、本質は盲目な愛だったり。セリフは多くないのだけど、それが届いてくる演技だった。
陽一は、ほとんどの登場人物と会話している…?それくらい、他者に影響を与えていく人物。徐々にその真意が見えてくるのが怖くて、可哀想で、目が離せない。
男としての熟し具合が要求される役を、今の加藤さんが演じているのを観られて良かった。心に刺さるというより、染みを作って広がった演技。悲しい結末しかないと理解していたとしても、私も"あの"陽一("あの"かちょさん)に堕とされたら付いて行くと思う。だから智花も仕方ないのだよ…。
妹・恵里菜は、最後の最後まで正体・存在理由が明かされずに物語に関わっていて、違和感としてものすごく残る。だからこそ、見ながらも気になり続ける役。理由が明かされてからの怒涛の流れは、脳内処理が追いつかずに驚きの連続を連れてくるからすごい。生きて実在して…いる?もういない…?