遠い国から来た、良き日 公演情報 ワンツーワークス「遠い国から来た、良き日」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    次代へどう語り継ぐか、それが問題だ
    ずばりテーマは「平和」...プロパガンダになりそうな内容を中学3年生の視点から捉えることで、問題を素朴に浮き上がらせている。広島県は第2の故郷であり、夏に何度も行っている。そのたびに感じていること、特に原爆投下された日は、朝から地元TV、新聞はそのニュースが流れ続ける。

    本公演は遠い国から来た転校生と、広島県の中学生が「平和」について向き合う場面が印象的である。「平和」が当たり前と思っている中学生、そのありがたさを自ら考える平和学習...。この公演は、観客も自ら考える、そんな投げかけがある。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    広島県の中学生にしても「平和」は空気のようなもので、その状況が当たり前のようである。一方イラクから来た男子転校生は自国での内戦で、平和のありがたさ、戦争の悲惨・痛みを十分すぎるほど体験してきている。しかし、そのギャップを際立った対立点として描かず、恋愛感情を織り込みプロパガンダを巧くコントロールしている。観客にも感性に訴える、または問いかけるという域に止めている。

    日本国内の事情として、少し強引であるが大学生の就職活動を絡めている。一見無関係と思われる事柄を、国内の諸々の格差問題への不満を”イスラム国”への興味という形で結びつける。「ママの台所で爆弾を作ろう」...イスラム過激派組織が発行したとされる雑誌記事がインターネットで拡散。簡単に爆弾が出来るらしが、その蜂起を促すため、英語で書かれていたという。本公演でも英語で、という台詞があった。その平和を脅かす事(戦争とテロを同義語にできない)がこんなにも身近にあるという怖さ。

    人は自分が見聞きした、その体験の範囲でしか実感できない。その先にある事を想像し我が事のように思いを馳せることは難しい。ましてや中学生では自国の悲劇を直視することは...。文献にあたり人の話を聞き、自分の中へ取り込む。机上学習のしたり顔になる怖さ、しかし現実に戦争を体験していないゆえの「平和」をどう次世代へ語り継ぐか、自分への問いかけでもある。

    当日パンフにある作・演出の古城十忍氏の「『取りあえずやり過ごす』この処世術が自分がこれまで、どれほど大事なものを...」という思いは同感である。大きな感情の振幅があれば、と思う。

    最後に、舞台セットは教室と山田家ダイニングキッチンがいとも簡単にイメージ転換する巧みさ。役者陣はワンツーワークス劇団員の確かな演技、若手役者の真摯な演技が光る。何より重くなりそうな言葉・台詞は方言(広島弁)という独特な柔らかさが緩衝の役割を果たしていたのも好ましい。
    本公演は尻切れトンボ感のするラストシーン...過去の愚行・諦観から何を感じとるか、それを物語として描ききらず切って棄てたようだが、そこは思索と余韻として受け取ることにした。

    次回公演を楽しみにしています。



    0

    2016/10/14 23:15

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大