売春捜査官 公演情報 稲村梓プロデュース「売春捜査官」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    濃密な舞台!
    上演前には中島みゆき の「ファイト」が流れ、この物語の応援歌のように聞こえる。もちろん冒頭、お馴染みの「白鳥の湖」や黒電話が鳴り響くというシーンは観られる。

    この公演、人間の五感を大いに刺激する。舞台セットは中央に古びた大きな机、その上には黒電話、洋酒ボトル・グラス、タバコ・灰皿、そして捜査資料がある。それを目で見、音響は耳で聞き、鼻で匂いを嗅ぎ、舌で食を味わう。その個別化した”感”を全て感じることができるが、さらに「触感」という感覚まで意識させる素晴らしいもの。この作品は多く上演されており、その中でどう観(魅)せるか、それは演技力にかかると思う。

    本公演...中野スタジオあくとれ、という小空間が、昨今バーチャルな世界が加速する中、五感すべてを刺激し感動するようなものに仕上がっている。

    そして、つかこうへい の思いであり想いの「 い”つか公平”に」がしっかり描かれていた。その最大の要因は、役者陣の熱演であることは間違いない。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    「熱海殺人事件」の女性部長刑事・木村伝兵衛(稲村梓サン)バージョン。全体的には前半・後半といった二部構成のように感じた。前半は登場人物のキャラクター、関係性を重視した説明シーンと、笑いの小ネタ(クレヨンしんちゃんの物真似、鮟鱇に似せた変顔=どちらも稲村梓サン)などを取り入れて後半との違い(落差)を鮮明にする演出のようであった。物語の構図は、つまらないありふれた犯罪・犯人である大山金太郎を、木村伝兵衛が一流の犯人に仕立て、その過程において社会的な問題の投げかけ...登場人物がそれぞれ自立、成長していく。

    さて五感であるが、見る、聞くはもちろん、匂いはタバコや大根(もちろん、役者のことではない)、食は駄菓子をほおばり、熊田留吉(篠原功サン)に吐き掛ける。触るは、役者同士はもちろん、観客(客席・自分の隣々席の女性を立たせ、両肩が露出するまで脱がせて口にキスをする。実にセクシーで迫力満点。キスされた女性は劇団員かと思ったが)まで触る(困惑した顔で終演と同時に席を立った)。

    後半の事件再現シーン...熱海海岸での大山金太郎(半野雅サン)と山口アイコのシーンから迫力を増す。特に絞殺場面の金太郎がアイコを追いかけて首を締めるところはリアリティがある。このシーン以降、つかこうへい の思いである、人種差別や性少数者・万平(世志男サン)への偏見への批判、人への温かい見守り、郷愁といった滋味溢れる台詞が心に染み入る。
    今まで観た公演は、電話の向こうの警視総監しか感じられなかったが、本公演では実際登場した。稲村さんの乳房を揉み、股間を触るというエロう素晴らしい演技であった。

    表現は相応しくないかもしれないが、芝居という見世物でありながら、五感全てから現実感を生み、その実感を通して生きているという喜びが感じられる。そんな広がりと深みを感じさせる観応えある公演であった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/10/09 11:25

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