かえってきた不死身のお兄さんー赤城写真館編ー 公演情報 演劇企画ハッピー圏外「かえってきた不死身のお兄さんー赤城写真館編ー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    余韻ある芝居
    昭和25(1950)年の地方都市...本公演は戦後の爪痕を残し、高度成長期はまだ先という、はざ間の時代を背景に、地域に根ざした人々の暮らしを温かく見守るような物語。
    この劇団の特長、舞台セットがその時代へタイムスリップしたかのような錯覚になる。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、上手側に赤木写真館スタヂヲの看板が掛けられた土蔵、中央に物干し竿、植木、下手側に家の廊下、縁台・三和台がある。

    登場人物は脱力感溢れる善男善女、ほろ酔い機嫌のような曖昧模糊(あいまいもこ)のような輪郭の虚像。それでいて地べたに足がつき過ぎた生活感、息遣いが伝わる実像。その背景には苛烈な戦場の光景と、目の前の日々淡々とした暮らし。それらをかき回すのが復員してきた、不死身のお兄さん・赤城茂助役(田口大朔サン)という存在である。もっともそう多く登場する訳ではなく、戦中と今(戦後5年)を繋ぐ役どころのようである。戦争の酷さ、それは人の運命を変えるほどの影響、そしてこの時代にも戦死誤報があったということ。何の変哲もない市井の人の日常が温かく描かれているが、その底流には戦後5年経ても誤報が届くなど戦争の傷痕を引きずっていることへの批判が込められているようだ。

    キャストの演技はハッピー圏外団員はもちろん、客演陣も人物造形をしっかり体現しており楽しめた。特に赤城みよ役(北ひとみサン)と女学校時代からの友人・野々村千恵役(天野耶依サン)の婚活を巡る騒動が、公娼制度の存在や兄の(恋愛)感情を暴発させる誘因になっている。
    また、その昔あった万屋(多種類の物を売る=公演では「三角商店」)、今で言うコンビニの存在も懐かしい。当時あった原風景、さらには戦争の光景を現実の向こうに想像する。街は変わり、今では見かけることが少なくなった光景...舞台セットの風景から、人は現在だけを生きている存在ではなく、時空を超えて過去の人々と心を通わせることができる、その仲立ちしているのが街の風景であることを改めて思った。

    一方、当時にしたら高級品であるカメラが、一人一台持つ時代が来る、そして電話と機能一体となった機器が出来るかも...そんな平和な世に自分たちがいるということを思い起こさせる秀作。

    気になるところ...
    劇場「てあとるらぽう」にしては、全体的に少し大きすぎる声のようで、テンポが単調に思えてしまう。人情、その機微が観えるシーンもあり、そのやわらかくやさしい雰囲気との兼ね合いが大切。それによってメリハリの利いた印象になると思う。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/09/27 20:23

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