味がしなくなったガムみたいな 公演情報 マニンゲンプロジェクト「味がしなくなったガムみたいな」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    シュールな...
    公演も面白かったが、当日配付されたタブロイド版「マニンゲンプロジェクト Vol.12」の作・演出の町田一則氏の文章がよい。
    本公演の説明にある、この世界はそこそこブラックです...は自虐または自愛ネタといった、いわば等身大的な物語。表層的にはシュールであるが、その根底には人間愛に溢れているような...。
    「味がしなくなったガムみたいな」というタイトルとは違い、噛めば噛むほど味がするような、そんな味わいのある公演であった。自分は結構好きである。
    (上演時間1時間48分)

    ネタバレBOX

    先の当日パンフには、ブラック企業 云々という書き出しである。そして演劇界もそこそこブラックであり、それは理不尽であると。続けてノルマに言及し、小劇場演劇の世界にはびこる悪習であるらしい。本公演は、この小演劇界の舞台裏...登場人物の言葉(台詞)を借りて毒舌を吐いている。

    舞台は中央にローテーブルと椅子、上手側に丸椅子2つ。中央には風采が上がらない男がゲームに興じている。上手の椅子には上下白のシャツとズボンで、半眼・無表情といった男女。どうやらゲームをやっている男は劇作家のようだ。そしてなかなか脚本が出来ないという台詞から、劇中劇として構成していることはこの段階で推察できる。この劇団の稽古、さらに入団希望の引篭もり男が登場し、劇団内の人間関係や運営について鬱憤・不満が吐露される。もちろん、本人が喋るのだが、言いにくい本音・本心といったところを、本人に寄り添うように白シャツ男女が代わり毒舌する。

    表層的には劇団内のキャラクターによる自虐ネタのように思われるが、その実はどこにでもいるような人々の話。劇団員という姿を借りて、一般の人々の内心を炙り出すようであった。例えば、ウインドーに映る自身を見て、今まで何をやってきたのか、このまま年を重ねるのかと自問する女。親に年金を払い込んでもらい経済的に自立できない男など、世間を見渡せばいるような人物像である。この公演の面白いところは、一見身内話の自虐ネタのようで、実は人間観察・洞察の鋭い人間ドラマのようである。この炙り出しを人間関係が苦手な引篭もり男に担わせるところにアイロニーを感じる。

    人はそれぞれの性格、生い立ちによって自分を装(色)・虚(色)していく。登場する白シャツ男女は、乱暴な口調で捲くし立てるが、それが真の姿であろう。その白地に段々と人生が染み込んで本人の今カラーになっている。それがまた変化を続けるのであろう。劇作家のプロポーズを絡めた「何とかなるさ~」という台詞は、町田氏の文章にある「その気になれば何しても生きていけます」と相通じ表現であろう。そしてどんな人生色になって行くのだろうか。

    少し気になるところは、ラスト近くに暗転の間隔が短くなり、その暗転時間が長いような。余韻に浸ること、集中力を逸らさないためにも工夫してほしいところ。もう一つ、引篭もり男...キャラ設定とその演技力が相まって見事であるが、その濃さゆえもう少し短かくても印象に残ったと思うが...。
    キャスト陣の演技は確かでバランスも良かった。人間の炙り出しという点からすれば、天野芽衣子サンの役に見せ場があってもよかったかも。彼女の慟哭することとは何か。
    照明・音響(ゲーム:ドラクエ音楽)も効果的であった。

    次回公演を楽しみにしております。
    ちなみに、町田氏による役者紹介も面白い。

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    2016/09/10 09:22

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