天泣に散りゆく 公演情報 文化芸術教育支援センター「天泣に散りゆく」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    身魂揺さぶられる...凄い!
    見た目から言えば、世田谷観音境内に設えた奉納野外舞台が時空間を越えて、1945年8月中旬の満州を出現させたかのようだ。当日は雨が降ったり止んだりの不安定な天気であり、上演中、一時小雨が降ったが中断することはなかった。上演後、藤馬氏は「人の涙が雨になった」旨の挨拶をしており、自分もそのフレーズをこの「観てきた!」に書き込もうと思っていたが...もしかしたら大方の人たちも同じ思いかもしれない。その当たり前のようなことが戦時中という異常時になると当たり前でなくなる。
    戦争、その最悪な不条理をしっかり観せてくれた秀作。身魂が揺さぶられた。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台は本堂に向かう境内石畳の左側に設える。右側を中心に天幕・パイプ椅子が並ぶ。舞台には紗幕に世界地図を描いたもの。場面転換に応じてテーブル、椅子が持ち込まれ場景を作り出す。その様子が見て取れるが実に自然な動作で、観客(自分)の気を逸らさない。
    そして、外見から感情移入できるような作り込みである。男優陣は全員坊主頭、軍服姿が当時を思わせる。石畳に響く軍靴の音。それも境内入り口方向から段々と大きく聞こえる演出は巧い。好戦況と思わせながら、終戦(玉音放送)に向かっている様子に重なる。

    梗概...満州では日ソ不可侵条約を一方的に破棄したソ連軍が日本人(民間人)への虐殺を繰り返す。祖国を守るため、家族を守るため、11人の男たちは弾薬なしの飛行機で突撃する。その名は『神州不滅特別攻撃隊』 である。
    これは史実であり、世田谷観音に「神州不滅特別攻撃隊之碑」があり、この場で上演する意味があった。
    この物語を体現する役者は、それぞれの人物造形がしっかり出来ており、当時の愛国心、夫婦愛、そして仲間との連帯感が濃密に描かれる。そして回想する老人が、当時死ねなかったことに負い目を感じる死生観に”戦争”という狂気が見える。

    国策によって満州へ移住した日本人や「王道楽土」の満州国人に対して、それらしい保護も行わず撤退しているようだ。軍という作戦主義ばかりで政治という態度が見られない。そもそも国策のため繁栄のためと称し、どれだけ多くの人たちが犠牲になったことか。犠牲を強いる構造に対し、過去の悲惨さを教訓とし死者と共闘しなければ...。それこそ夢違観音。

    この企画・脚本の松本京 氏、演出の山本タク 氏が当日パンフで同趣旨で多くの人々に平和の尊さを伝えたいと...まったく同感である。そして営利団体ではなく、NPO法人が開催することに意義があるという。

    次回公演を楽しみにしております。

    0

    2016/09/09 18:23

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大