満足度★★★
初二月病
レッド(山本直樹氏)を念頭に置きながらの観劇。
濃密な、やるせない過激派のどん詰まりの青春。
だがどこまでも破滅へと向かう滑稽な正義という妄想。
役者の熱量もいい。
欲しいのは怨讐。
以上のようにツイートさせて頂いたのだが、
まさにその通りであって、
上記に書いた赤軍派の漫画が今まさに連載中の漫画なのである。
2006年より講談社の漫画雑誌『イブニング』にて連載を開始し、
今や最終章ともいえる『レッド 最後の60日 そしてあさま山荘へ』を絶賛連載中なのである。
脇道に逸れるが、山本直樹氏といえば80年代のエロ漫画を牽引した伝説的な漫画家さんである。
それが時代を流れ、今や硬派な社会派を上梓するに至る訳だが、
そうしたところは割愛させて頂くとして、
だからこそこの作品の根底のディテールがリアルであり、
あらかじめ決められた悲劇的ラストに猛進していることが、
身を切るように切なく苦しくなる山本作品としては近年最も強い逸品なのである。
さて、
話が逸れた。
「総括」
そうかつ。
物事を一つにまとめ、締めくくること。
左翼団体において、取り組んでいた闘争が一段落したときに、これまでの活動を締めくくるために行う活動報告のことを「総括」と言っていた。闘争の成果や反省点について明らかにし、これからの活動につなげていく。
ところが連合赤軍では、「真の革命戦士となるために反省を促す」と称して行なわれたリンチ殺人を意味することになった。
(ウィキペディア)
総括という言葉にかけられた呪いと恩讐。
僕は上記の漫画で血塗られた「総括」を目にして、
目の前の演劇は奇しくもそれを超えるようには作られず、
敢えて舞台中央に人間の模型を鎮座させ、
それを殴り、ナイフで刺し、えぐる事で表現を促した。
素晴らしい変換である。
実際に演ずることをせずに痛みや やった事実を観客に伝えるオブラートに包んだ表現。
離反した精神世界の淵を撫でているかのような表現。
発想の転換。素晴らしい。
ただその事による「痛み」「恐怖」「悲しみ」は和らいだように思う。
副作用ではあるが、どちらを取るかでこの作品は大きく変わってしまう。
演出は前者を取った。
成功か失敗は観客が決めること。
ただ僕は半々でもよかったのではと思う。
あの人形を殴るのも捨て難いし、
また直接に殴る表現も捨て難いと感じた。