庚申待の夜に 公演情報 風雷紡「庚申待の夜に」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    とても意味深な...見事!
    明治時代の足尾鉱毒事件(1917年:谷中村が名実共に廃村)を背景にした物語であるが、その底流には現在から未来に向けての警鐘。時代背景・状況には明治期の経済発展の犠牲になった地域住民の姿、谷中村に伝わる因習やその人の心奥にあるドロドロとした情念のようなものを細密・繊細に表す。怖い印象であるが、そこに静謐さも感じてしまう。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    東日本大震災における原発問題を意識していると思われる。先に記した足尾鉱毒事件(廃村)から100年、当時と違って目に見えない汚染に怯える。また震災によって渡良瀬川流域に足尾銅が検出されたという報道を考えると、過去の事件として片付けられない思い。過去の負が現在そして未来にも繋がるという負の連鎖は恐怖そのもの。まさに現代のテーマ。

    本公演では、渡良瀬川流域を意識したのか、茨城県古河市が唯一堤外の地名として挙げられている。ここまでを鳥のような俯瞰した捉え方とすれば、この谷中村で生きてきた人々の古伝、因習なり家制度に絡んだ人間模様は地を這う虫のような観せ方になっている。この個々人が持つ感情を丁寧に掬い上げる。もっとも陰湿な感情からすれば泥水を掬い上げているかもしれない。人が持つ清濁...清い心に沈殿していく澱(おり)は、その地の閉塞感、疎外感が遠因かもしれない。一方、古来から地域連帯という村意識という言葉も耳にする。こちらの目に見えない感情も、別の意味で怖い。心の闇を抉り出すような人間観察が鋭い。
    個々(戸々)の心情を炙り出すことで、社会のあり様が浮き彫りになるところが大きな魅力であると思う。

    この怖い雰囲気を、シンプルな舞台セットが醸し出す。二面客席の最奥(出入り口反対側)に神事台のような。その左右に壁塗布が垂れるようなオブジェのようなもの。それは土色のように汚れ、照明があたると怪しげな雰囲気になる。その中で役者陣は怪(妖)しげな演技、雰囲気を漂わす。登場人物の性格付け、立場の確立は見事であった。

    当日パンフも丁寧に作られていたが、その中の用語集に「魂呼ばい(たまよばい)」の説明があった。本公演、上演期間が地域によって「盆の日」のとらえ方が違うかもしれないが、盂蘭盆(うらぼん)にあたるような...。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/08/14 22:10

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