満足度★★★★★
『フランス三部作 Bleu~青嵐の憧憬~』
舞台にあるのは、Rougeの時にあった両端トリコロールカラーの幕だけで、舞台の上には小道具ひとつない舞台の上で、4人の人物たちによる物語が描かれて行く。
貴族令嬢マリー・アニュースと彼女に仕える執事家の青年セルヴィニアン、従僕の青年アルノー、革命家のロべスピエール。
4人が、革命の渦に呑まれながらも愛と友情と誇りに必死に生きた若者たちの青春を描いた物語。
4人だけで「革命」を描く。
Rougeは、女性革命家の視点、Bleuは貴族令嬢から図らずも革命に身を置くことに
なった一人の女性の視点からみた革命が描かれる。
最近、自由と愛するものを守るために、武器を取り、戦うことの矛盾とジレンマについて、考え向き合う舞台を観ることが続いていたのだが、この作品でもその事を改めて考えさせられた。
自由と平等と平和を得る為に武器を取り戦い、血を流すことの矛盾とジレンマと、いつしか暴走して行く恐怖と、そこから生まれる新たな差別と憎しみとやる瀬なさをこのBleuを観て改めて感じた。
差別のない自由で平等で平和な世界を創る為の革命であり戦争が、いつしか暴走し、嘗て自分が味わった苦しみと悲しみを新たに生み出し、自分がされたことを自分が人にしていることに気づかない怖さとジレンマ。
力や暴力、思想弾圧による革命や戦いでは何も変わらないことを、何故これほど歴史で繰り返しても気づけないのか。
そんな中で、小松崎めぐみさんのマリー・アニューズの掛け値なしの透明で真っ直ぐな明るさと純真さ、純粋さに触れた時、涙が溢れるほど心に染み入る。
人の心を開くことで、平和で平等で自由な世界を創ることが出来る事に気づきかけ、それでも一途に革命こそが全てを変えると頑なに思い込み行動し、やがて当初の思いとは裏腹に、独裁者へと変わっていってしまった、早川佳祐さんのロベスピエールに、平和で平等で自由な世界を守り、得る為に戦うことの矛盾とジレンマを感じ、胸に深く痛くもどかしく、ロベスピエールの悲しみを思った。
中川朝子さんのセルヴィニアンもまた、大切なマリーを守る為に、戦いに身を投じざるを得なかった姿と一途さが切なくも、最後まで守り切ろうとするその姿が、とても潔くかっこいい。
そんな中、いつもマリーをそっと見守り続け、最後まで傍にいて、マリーの心を守り続け、唯一武器を取らず、戦うことに身を投じなかった平田宗亮さんのアルノーは、ほっとする存在だった。
やはり、変えられるのは、綺麗事かも知れないけれど、心であり、愛であり言葉だと思えてならない。
「物語には、言葉には、力がある。だから、物語で、言葉の力で世界を変えたい。」私の好きな劇団の主宰であり、俳優である末原拓馬さんの言葉だが、私も同じ思いで作家になろうと思った。その言葉の持つ意味がこのBleuの舞台を観て重なった。
めぐみさんのマリー・アニュースの透明で真っ直ぐな、優しく強い純粋さと純真さが胸に染みて包み込み、様々な心と感情を抱き、駆け巡り涙が溢れた。
めぐみさんから、『ぜひ、観て頂きたい』とご案内を頂いたのが解る、心に焼き付いたとても素晴らしい舞台だった。
文:麻美 雪