フランス革命三部作 公演情報 芸術集団れんこんきすた「フランス革命三部作」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    『フランス三部作 Rouge~花炎の残像~』
     劇場内に一歩踏み込むと其処には、両端をトリコロールカラーに染められた幕がかかり、その前に1脚の椅子と花の生けていない花瓶のようなものが乗ったテーブルが1つ置かれた舞台があるだけ。

     舞台の幕が上がり、白い布の塊が蠢き、這い出すように現れたのは、女性革命家テロアーニュ。

     ベルギーに生まれ、イギリス、イタリアと流転の人生を送り、流れ着いたフランスで民衆による革命に出会い、アンヌから「フランスの自由の恋人」と称される女性革命家テロアーニュ・ド・メリクールとなった実在の女性革命家の生涯を、中川朝子さんが激しく、艶やかに鮮やかに、切なくも毅然としたひとりの女性として描き駆け抜ける一人芝居、『フランス三部作 Rouge~花炎の残像~』の物語の扉が開いた。

     優しくはあるが、継母の暴力から守ってくれなかった父に絶望して、家を飛び出してから信じては裏切られを繰り返し、イギリス、イタリアとその都度自分の居場所を探して流転の生活を送っていたアンヌが、最後に行き着いたのは、「自由と平等の国を創る」という思想を旗印にして革命を起こしていたフランス。

     革命に出会ったことで、アンヌの中の何かが弾け、革命へのめり込んでいった彼女の前に大きな壁として立ちはだかるのは、またしても男たちであり、女という自分の性。

     女であるテロアーニュが注目され、認められることで、敵視され、陥れようとする男たちの狭量さ、テロアーニュを翻弄してきた男たちの視線と目線、女であるということ。

     革命家を標榜する彼らでさえ、男としての本質は変わらないことに憤り、絶望したであろうテロアーニュ。

     命尽きるまで、テロアーニュの身を焼き尽くした、赤い革命への熱の滾りは、その最後に緋へと昇華してのではなかったか。

     彼女の目指した革命は、性別や貧富の差、宗教や思想、地位の差で差別されない平等で自由な世界にすることであり、決して血で血を洗い、誰かを陥れたり排除するものではなかったはずだ。

     テロアーニュの『革命は、心を変えること。心を変えなければ革命は起こせない。』の一言が胸を抉る。

     心に差別や区別を持っているうちは、その考え方を変えなければ、自由と平等を手にいれる革命は起こせない。

     最近のテロの報道を見る度に感じることも正にこのことである。

     時に可憐に、時に艶やかに、毅然と激しく、鮮やかに切なく、命を緋(あか)く燃やし尽くしたテロアーニュ・ド・メリクールそのものの中川朝子さんが其処にいた。

     一人の女性の身の内側を染め尽くした革命という名の熱の赤、その赤が身の内全てを焼き尽くし緋(あか)に変わる迄を一人で描き切った、中川朝子さんの熱の紅が私の心に移り、感じるものがあった素晴らしい舞台でした。


                           文:麻美 雪

    0

    2016/07/28 12:42

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大