合理的エゴイスト 公演情報 劇団ピンクメロンパン「合理的エゴイスト」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    テーマ性がある物語だが…
    現代から近未来を描いた内容...コンピューターの技術が刻一刻と進化している。その象徴として人型ロボットと人間との関係を興味深く観せている。専門的な用語としてシンギュラリティ(技術的特異点)という言葉があるという。人工知能が人間の知的能力を追い越し、自力で加速度的な発達を始める時点だという。

    コンピューターが誕生して約70年、パソコンが普及して30年、インターネットが利用され出して20年、そしてスマートフォンを手にするようになって10年足らず...この加速度的に進化してきた歴史を見ると当たり前のような気がする。この進化がさらに進んだ世界...そこで起こる合理的なエゴと不条理へのストが展開する。この「エゴ」と「スト」の間にはイ(意)が必要なのだが...。

    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、瀟洒な部屋、段通が敷かれ上手に豪華なソファー、テーブル、下手にも丸テーブルと椅子。壁には斜めに掛けた絵画が飾られている。この美術から既に歪な世界観である。

    梗概は、 幼くして両親を亡くした姉妹は仲睦まじく生活していた。ある時、政府の人間が「お宅にロボットはいないか」 と。家族を傷つけ殺す人間(自宅に火をつけ無理心中しようとする父親)、家族(愛情)を求めるアンドロイド…どちらに真心があるのだろうか。社会や常識に血を流しながらも懸命に存在することを求める。

    シンギュラリティは、人にとって必要なアイテムになるという。危険や過酷な労働はロボットに任せられるという期待。一方で人類滅亡の序章という考えもある。誰も理解できないコンピューターの「知」に依存し、制御不能な人口知能に人は支配されるというもの。

    公演では家庭ロボット(アンドロイド)が不具合(故障)を起こし、回収し出すという。相当進化した形態のようで、一定の感情を持つようになるが、その耳目出来ない不思議な”心“は十分理解できない。アンドロイドには人の「心」そのものが不条理である。人の生活の便利さを求めるために造られ、不要になれば破壊される。至極当たり前のような行為であるが、近未来アンドロイドにはある程度感情があるような描き方である。その視点から見れば勝手に造り、自分たち(人間)の手違いで不具合を生じさせ、その結果破壊するのである。「エゴ」と「スト(襲撃)」の間には、「イ=意(思)」の疎通または交流が必要なのだろうか。

    一方、人間でありながら、錯覚か記憶の錯誤であろうか、自分をアンドロイドだと思っていた。この男がアンドロイドを率いて人間社会に対してテロを起している。自分は人間である、という気持にアンダロイドに対する優越が透けて見え、アンドロイドからスポイルされる。そこに区別・差別という言葉の違いはあるが溝・壁があることは明白である。ここでも人間のエゴが見える。

    この公演で、アンドロイドの不具合(欠陥)とは何か、人間を傷つけるようになったのか。このアンドロイド開発は1社独占なのか。他社があればそのアンドロイドの存在はどうなのか。政府の人間がアンドロイドを憎んでいるような行動。妻を盲目にされた恨みのようであったが...。その人間が持った心の痛みのようなものが解らない。人間の内面・感情からの視点の描きが弱いと思う。人間とアンドロイドがこのような事態・状況になった具体的なことを描くことで、問題の根源が見えてくると思う。またアンドロイドは、肉体的な痛みを持つまでになっているのか。一方、アンドロイドの軍事転用という指摘は鋭く怖い。この公演全体の描き方に濃淡が見えたのが残念であった。

    いずれにしても経済至上主義、合理的で快適な生活を営むための欲求が、ロボット、アンドロイドの開発の原動力になっているようだが…。
    役者陣の演技は安定しており、バランスも良い。そして役柄に応じて衣装に変化を持たせ役割を明確にする観せ方に工夫を感じる。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/07/23 18:28

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