ラストダンス 公演情報 国分寺大人倶楽部「ラストダンス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ・・・
    カーテンコールでの河西氏の無言の一礼が印象的だった。

    ネタバレBOX

    だが、そんな感傷的な部分で、作品を評されたくはないと思うので、手心は加えず、思ったことを記す。

     この脚本をどう捉えるかによって、かなり観方が変わる。
     まず、この作品をリアリズムの観点から見ると、現実感がない。いくら息子の友達と言っても、バイトで雇ったらあそこまで好き放題にはさせられないだろうし、そんな店は経営が成り立たない。無責任な息子が店を継いでからは、実際に経営が傾いていく訳だが、その息子の焦りや苦悩も、実際にその立場になったらあんなもんじゃないだろうと思う。少なくとも、あんなに簡単に店を畳むなんてことにはならない。総じて、映画館の経営という観点から見ると、まったくリアリティがない。恋愛などをテーマに河西氏が作る作品には強烈なリアリティがあるだけに、尚更物足りなく思ってしまう。とは言え、演出や演技においての細部のリアリティへの拘りは凄いものがあり、ギリギリのことろで、もしかしたらこんな店もあるのかもしれないと思えなくもないのだが。
     
     ただ、別の観方もできる。映画館の話はただの器であって、そこに生起する人間関係とそこに流れる空気こそが、この作品の主題とする見方。そういう観点からはとてもよくできている。男女間に潜む力学はいつもながら素晴らしい。ここに流れている無気力、無責任、倦怠感などは、今の若い世代が共通して持っている空気を捉えているようにも思える。そう考えると、これはリアリズムではなく、現実の戯画なのではないかと思えてくる。作中のピカソの話も、このリアリズムと抽象のことを暗に意図しているようにも取れる。この演劇はリアリズムではないのだと。この点は作為か偶然かはわからないが、いずれにせよ、全体の構成は極めて精緻に設計されているので、すべて計算の可能性もある。
     そうは言っても、私が河西氏の作品に興味を持っているのは、強烈なリアリティという部分なので、良い点もたくさんあったが、もの足りない部分もあった。
     ただし、最後にカーテンコールで深々と無言で一礼した河西氏の姿には、本当に心を打たれた。人の人生の大切な一場面を目撃してしまった衝撃というか。氏の今まで背負ってきたものの大きさに想いをはせながら。

     国分寺大人倶楽部の公演を私が観たのは、『ハローワーク』2回と、今公演の
    3回だけでしたが、素晴らしい舞台をありがとうございました。

     役者さんたちも、皆、丁寧な芝居で、素晴らしかった。

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    2016/07/14 16:42

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