なにも覚えていない。
遅れて劇場に入り、美術に目を見張る。いつものトラムの光景ではない。
普段椅子のある位置に、大きな舞台がある。
たぶん、桟敷で見上げるように見ると面白いんだろうな、と上の席に座る。
それこそ、妙な美術を見下ろす形は、鳥のまなざしだ。
しかし、そこまでだった。
テキストが思い出せない。なにが起こったのか説明もできない。
音や動きは心地よく伝わってくる。が、音や動きが意味として伝わらない。
意味のあるはずの言葉が、意味を持たないなにかとして伝わってくる。
だから、この芝居において何か書けることはない。
俯瞰した風景は、なにひとつとして記憶に残らなかったのだ。
※遅れて入場しましたので、評価は控えさせていただきます。