ニッポン・サポート・センター 公演情報 青年団「ニッポン・サポート・センター」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    立ち上げる人、近所の人
    力まず自然なやり取りに“あるある感”満載の登場人物、
    あー、こういうことが日々あちこちで起こっているんだろうなと思わせる。
    普通の会話がどうしてこんなに可笑しいのか不思議だ。
    「NPOを立ち上げる人々」と「ボランティアする人々」がくっきりしていて
    その温度差がリアルに可視化されているところが可笑しいんだな。
    俗っぽい会話から日本の社会問題が透けて見えるような構造が素晴らしい。
    山内健司さん、あのキャラはアテ書きなんでしょうか(笑)

    ネタバレBOX

    舞台は駆け込み寺型NPOの事務所。
    日々様々な問題を抱えた人々が相談に来る。
    受け容れる側は所長のほか、サブリーダーやカウンセラーなど。
    事務所には近隣に住む人がサポーターとして待機しており、噂話に花が咲く毎日。
    サブリーダーは、夫が盗撮の疑いで捕まり、職場に迷惑がかかるのを怖れている。
    インターンの学生が2人来ていたり、DVが疑われる夫が訪ねてきたり、
    サポーターの1人が義理の息子の再就職を市役所にツテのあるNPOに頼んだりと
    小さな事務所は今日も多くの人が出入りしている・・・。

    定点カメラで事務所の一日を撮り続けているかのような淡々とした視点。
    時間内に結論を出そうとか、問題を一つでも解決させようとかいう
    余計な力を排した結果、ごくごく自然で超リアルな手触り。

    リアルなのは登場人物も同様で、NPO立ち上げから関わってきた人々と
    サポーターと言う名でボランティアに来る近隣の人々との落差が大きいのも
    現実的で“あるある感”満載。
    超個人情報を扱う場所なのだが、噂話が飛び交い、噂の情報交換は活発。
    客入れの時から、舞台で本を片手に碁を打つ悠々自適おじさんや
    人はいいが“知りたがり・のぞきたがり”なおばちゃん精神全開のキャラ、
    家業の床屋(?)が暇になるとここへ来て時間を潰す自称「髪結いの亭主」など
    そのユルいたたずまいが、所長ら相談員の持つ緊張感とは対照的だ。
    そのサポーターに「ありがとうございます」とひたすらお礼を言い続ける職員達。
    現場でよく見る風景であり、つくづく“ボランティア”のあり方を考えさせる。

    海外赴任から戻ってから会社を辞めた息子の再就職を頼むエピソード、
    開発援助という名の下、自分の仕事に疑問を感じて行き詰まった義理の息子が
    いかにも生真面目なきちんとスーツを着て話を聞きにくるシーンなど
    本人の真剣さと親の期待、周囲の楽観などが
    「実は市のゆるキャラの着ぐるみにはいる」仕事だという現実の前で
    可笑しいやら気の毒やら現実はそううまくいかないよって感じで笑ってしまう。

    舞台奥に3つ並ぶ“カラオケボックスの業者が作った(劇中の台詞から)”という
    防音の相談室が秀逸。
    渦中の人が中に入り、スタッフがブラインドを閉めた途端、
    観客は自然と舞台手前に集中する。
    時々相談室のドアが開くと中の会話が漏れ聞こえて、
    そこでは話が継続して進行していると判る。
    人物の出ハケ、話題の切り替え、話の同時進行という役割を担って
    素晴らしく機能している。

    真面目なだけに、自分の思いを真剣に伝えようとすると、
    人はこんなに滑稽なものだということを、平田作品は示してくれる。
    いつもながら役者さんの間の取り方がまた素晴らしくて、
    これも笑いの大きな要因だと思う。






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    2016/07/10 01:47

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