ニッポン・サポート・センター 公演情報 ニッポン・サポート・センター」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.2
1-10件 / 10件中
  • 満足度★★★★

    公的な空間と「聴覚」「視覚」を遮断した中で、触ることのできないプライベートな空間。

    ネタバレBOX

    近所のサポーターの人たちは、確かにお節介。
    というよりも、いちいち顔と口を突っ込みたい。
    対する若者たちは、マニュアル通りな。

    おばさんも床屋のおじさんも、もっとセンターで起こることに興味津々のほうが良いのではないか。つまり、「お節介な人たち」が出てきたように思えるからだ。

    笑いはどうも上手くはない。
    演劇の笑いの1つ、「ある人が知っていることを、ほかの人が知らない」という結果生まれる笑いが、イマイチ爆発力が足りない。「ここは笑わせる」を意識してこのシークエンスを作っているのならば、きちんと笑わせるツボを押さえてほしい。
    正直、こういうテイストの作品だから笑ってしまった、感はある。
    もちろんコメディでないことは承知の上なのだが。

    なんとなく「昭和は良かった」風に見えてしまうことが少し残念か。

    面接室で歌って、悪態をついて去っていった女性は、何だかわからない恐さがある。そういうわけのわからなさまでも受け止めなければいけないというにしても、恐すぎる。もっとソフトな訳わからなさでもよかったのではないか。エキセントリックすぎるので。

    歌が要所要所に歌われて、ラストも歌で閉じるというのは、平田オリザ風味ではあった。

    近所のサポーター役のおばさんの、妙なハイテンションは、観ていてちょっと苛つく。たぶんそういう人はいるのだろうが、地に足が着いていないというか、唐突に叫んで歌って、手をグルグル回して、に違和感を感じる。

    「私」の自意識と「存在」のアピールの「痛さ」なのだろうが、それが「お節介おばさん」の範疇を超えて、歌って叫んだ意味不明の女性と同様に恐い存在だ。

    床屋のご主人も「私の存在」を訴えかけすぎる気がする。それが「私の存在意義」ということへの主張ということなのか。

    しかし、床屋やってる感じがなぜかしない。仕事を持っていて、手空きのときにちょっとやって来てお手伝いという雰囲気がしないせいだろうか。
  • 満足度★★★★

    現代口語・真骨頂
    サポートセンター・・DVから失業者、何となく居場所の無い人、カウンセリング。どういった相談支援を行うのか、通常なら何か専門分野がありそうだが、ここは「総合相談所」的な位置づけらしい。まあ、そういった設定でなければいろんな人たちが出入りするセミパブリックな空間にはならないわけだけれど。
     設定の問題はありつつも、福祉や対人支援の現場に流れる空気や、支援者としての心構え、人との距離感、また行政との関係など、よく捉えていたし、片思い話、職探し話、DV(が疑われたが結局無かったので「事件」的な盛り上がりはやや張りぼてではあるのだが)話、珍妙な来訪者エピソードなど、ネタもそこそこ揃っていて、先を見たくなるドラマの仕掛けはある。だがやはり、場の形象の緻密さに、唸らせられる。 で、やはり笑いがきっちりとツボを外さずに誘導できていたのも、場のリアリティゆえ。
    さてBGMの無い平田オリザの芝居に多用される、アカペラの歌がこたびも最後に流れる。なぜかしんみりする。歌で真情あふるる場面にする「手」ではあるが、何か人間は悲しい、けれどそれでいい、的な「俯瞰」の感覚がよぎる瞬間を与えられる。
    それと言うのも、暗い時代だからなのに違いない。客観的に見ると、哀れ、だから笑えるのだが、笑ってる自分も、その大勢の一人である。「支援」を仕事とする者の矜持が、各場面で垣間見えることも、効いている。そしてそれは数多くある職業のほんの一つ、などではなく、これから日本が社会関係の基礎にすえるべきあり方であるのかも知れない・・などとも思う。政治(富の分配)があまりに理不尽だから沸いて来る心情でもある。

  • 満足度★★★★★

    立ち上げる人、近所の人
    力まず自然なやり取りに“あるある感”満載の登場人物、
    あー、こういうことが日々あちこちで起こっているんだろうなと思わせる。
    普通の会話がどうしてこんなに可笑しいのか不思議だ。
    「NPOを立ち上げる人々」と「ボランティアする人々」がくっきりしていて
    その温度差がリアルに可視化されているところが可笑しいんだな。
    俗っぽい会話から日本の社会問題が透けて見えるような構造が素晴らしい。
    山内健司さん、あのキャラはアテ書きなんでしょうか(笑)

    ネタバレBOX

    舞台は駆け込み寺型NPOの事務所。
    日々様々な問題を抱えた人々が相談に来る。
    受け容れる側は所長のほか、サブリーダーやカウンセラーなど。
    事務所には近隣に住む人がサポーターとして待機しており、噂話に花が咲く毎日。
    サブリーダーは、夫が盗撮の疑いで捕まり、職場に迷惑がかかるのを怖れている。
    インターンの学生が2人来ていたり、DVが疑われる夫が訪ねてきたり、
    サポーターの1人が義理の息子の再就職を市役所にツテのあるNPOに頼んだりと
    小さな事務所は今日も多くの人が出入りしている・・・。

    定点カメラで事務所の一日を撮り続けているかのような淡々とした視点。
    時間内に結論を出そうとか、問題を一つでも解決させようとかいう
    余計な力を排した結果、ごくごく自然で超リアルな手触り。

    リアルなのは登場人物も同様で、NPO立ち上げから関わってきた人々と
    サポーターと言う名でボランティアに来る近隣の人々との落差が大きいのも
    現実的で“あるある感”満載。
    超個人情報を扱う場所なのだが、噂話が飛び交い、噂の情報交換は活発。
    客入れの時から、舞台で本を片手に碁を打つ悠々自適おじさんや
    人はいいが“知りたがり・のぞきたがり”なおばちゃん精神全開のキャラ、
    家業の床屋(?)が暇になるとここへ来て時間を潰す自称「髪結いの亭主」など
    そのユルいたたずまいが、所長ら相談員の持つ緊張感とは対照的だ。
    そのサポーターに「ありがとうございます」とひたすらお礼を言い続ける職員達。
    現場でよく見る風景であり、つくづく“ボランティア”のあり方を考えさせる。

    海外赴任から戻ってから会社を辞めた息子の再就職を頼むエピソード、
    開発援助という名の下、自分の仕事に疑問を感じて行き詰まった義理の息子が
    いかにも生真面目なきちんとスーツを着て話を聞きにくるシーンなど
    本人の真剣さと親の期待、周囲の楽観などが
    「実は市のゆるキャラの着ぐるみにはいる」仕事だという現実の前で
    可笑しいやら気の毒やら現実はそううまくいかないよって感じで笑ってしまう。

    舞台奥に3つ並ぶ“カラオケボックスの業者が作った(劇中の台詞から)”という
    防音の相談室が秀逸。
    渦中の人が中に入り、スタッフがブラインドを閉めた途端、
    観客は自然と舞台手前に集中する。
    時々相談室のドアが開くと中の会話が漏れ聞こえて、
    そこでは話が継続して進行していると判る。
    人物の出ハケ、話題の切り替え、話の同時進行という役割を担って
    素晴らしく機能している。

    真面目なだけに、自分の思いを真剣に伝えようとすると、
    人はこんなに滑稽なものだということを、平田作品は示してくれる。
    いつもながら役者さんの間の取り方がまた素晴らしくて、
    これも笑いの大きな要因だと思う。






  • 満足度★★★★★

    観てきた!!!!!
    好みが分かれそうですけど、私はこういう写実的な演出、演技、とても好きです。
    青年団さんの舞台を観るようになってまだ日が浅いのですが、見事にハマってしまいました。

    開場直後からカーテンコールまでシームレス。
    暗転すら一切なくて演技も自然なので、どこかに実在する日常の空間をそのまま切り取ってきたような
    そんな錯覚を起こしてしまいそいうになるほどでした。

    現実にもありそうなリアルな事案ばかりだったので落としどころが気になっていたのですが、
    「人を助ける」というテーマにしてはオチが少しぼんやりした印象でした。

    ネタバレBOX


    再就職先がゆるキャラ?のくだりが凄い好き。
  • 満足度★★★★★

    どぶに落ちても
    悲嘆にくれる社会派作品が増えている中で、からりと描かれていて気持ちが上がる。「志村、後ろ!」と言っているような、言われているような。

  • 満足度★★★★

    ネタばれ
    ネタばれ

    ネタバレBOX


    平田オリザの新作【ニッポン・サポート・センター】を観劇。

    サポートセンターでは、DVや家庭貧困などの無料相談を行っていて、
    職員の他に、近所のボランティアの人達も交代で手伝いに来ている。
    様々な問題を抱える職員達とボランティアの活躍?を描いている。

    解決する事のない数々の問題を、起承転結の境目のない構成で語られていて、開演のベルと共に始まる事もなく、開場と共に舞台では既に俳優が演じていて、客電が落ちることなく、客席が埋まった辺りから徐々に物語が始まっていく。
    そしてそこで起きている顛末を、覗いて見ているような錯覚?に落していくのが平田オリザの見せ方だ。
    今作もサポートセンター内だけのドタバタ劇のようでありながら、何気ない会話の中から、世界での日本の立ち位置を感じらせてくれる辺りの戯曲とそれをさらりと演じている俳優の上手さは大したものである。
    そして大切な事を語っている俳優がずっと後ろ姿で、それを聞いている俳優しか見せない手法は何時もながらである。
    劇場に来て、芝居を観て、非日常を経験した!という往来の演劇体感が全くない代わりに、独自のものを作り続けている平田オリザは、我々に別な演劇体感させてくれる。

    傑作であり、お勧めであり、面白い演劇である。
  • 満足度★★★★

    ありがとう
    面白い。120分+AT30分。

    ネタバレBOX

    役所から指定管理を受け運営している、福祉的NPO。立ち上げからのスタッフ・春山(辻美奈子)の夫が盗撮で捕まり、NPOの存続とか春山の辞意への懸念に揺れる。加えて、妙な相談者の三田村(富田真喜)とか、DVも懸念される相談者の夫・原口(小林智)もやってきて、所長(能島瑞穂)の悩みは尽きない。微妙なとこでは、非常勤スタッフの志村(島田曜蔵)のスタッフ・児玉(堀夏子)への片思いや、サポーター鮫島の義理の息子・たかし(河村竜也)の再就職支援もあって、センターはとてもせわしない…。

    淡々とした感じと、ちょいちょいピリっとした空気の二時間会話劇。そんな中にあって、志村とたかしのネタはウケた。スーツの決まってるたかしの、ゆるキャラな動きを想像すると笑える(アフリカの人権蹂躙話でエピソード自体、引き締まってるけど)。

    防音遮音な面談室の使い方も面白い。現実とは別世界の戦場のような、教会の懺悔室(というのがあるか知らないけど)のような、ちょっとした異質感があって。扉が開いて、こちらとつながる際の緊張感のようなものが見え隠れしてて。まあ、こっち側はこっち側で、色々と悩める人々で蠢いているんだけど。
    時代の移り変わりとか人の感覚の遷移とか、ちょこちょこ感じさせられる作品。
  • 満足度★★★

    約115分
    増加する貧困・虐待の背景をなす、この国の失政があまり描かれていないところにもどかしさ。
    ドタバタ味がほどよく盛られた会話劇としては楽しめた。

    ネタバレBOX

    NPO事務所の防音施工された相談室から、戸の開け閉めのたび漏れ聞こえてくる会話の断片があまりにもしょうもなくて面白かった。
  • 満足度★★★

    オリザさんの新作の成果は?
    平田オリザさんの待望の新作でありながら、かつての「静かな演劇」から一転、喜悲劇な要素を盛り込みながら現代社会の実情を平田オリザさんと青年団メンバーが立ち向かう表現はよかったけど、冒頭と終盤の志賀賢太郎さんと山内健司さんのからみがまるで二人芝居ようになったのは残念。

  • 満足度★★★★★

    通りすがりの私
    井戸端会議をチラッと見聞きしたような感じです。後ろ髪を引かれつつも歩みを止めることはありません。

    ネタバレBOX

    谷田貝という地方都市にある生活困窮者やDV被害者からの相談に乗るMPO法人ニッポン・サポート・センターの相談室に隣接するロビーを舞台に、相談者、職員、地域のサポーターの人々の日常を数時間定点観測した話。

    離婚を考え夫の元を逃げ出した女性については、追いかけてきた夫と相談室で冷静に話し合うところまでは進展しました。ある職員の夫が女子中学生を盗撮したとして逮捕された事件については、飲み込んだSDカードが排泄されたとの連絡が来ました。ある商社マンはアフリカで理不尽な児童労働を目の当たりにして精神を病んで地元に戻ってきて職を求めていましたが、着ぐるみの仕事を紹介されました。新しく、発達障害の女性が相談に来ました。

    つまらないダジャレがあり、役所からの出向者はゆっくり歩き、ありがちな日常です。そして、先ほどの案件はどう解決されていくのか、あるいはこじれるのか、通りすがりの私たちには知る由もありません。当然のことです。

    高橋源一郎氏を迎えてのアフタートークで、寅さんをモチーフにしたとのこと、ロビーはとらや、奥の相談室の方はタコ社長の工場と聞いてびっくらこきました。

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