逆光、影見えず 公演情報 MCR「逆光、影見えず」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    オサム
    主宰で作・演出の櫻井智也さんは20代の頃太宰作品にのめり込んだという。
    その正面切って向き合う姿勢が存分に台詞に表れている。
    もうすぐ死ぬからって、美しい過去ばかり出て来るわけじゃない、
    っていうところがいい。
    櫻井さん演じる医師のいい加減さが最高!

    ネタバレBOX

    ひとりの男が余命宣告されて、否応なしに自分の人生を振り返る。
    時代を逆行して過去の出来事が再現されるのだが、
    高校時代の彼が鼻持ちならないナルシストだったり、
    友人の妻と付き合っていたことがあったりと、
    ヤな奴の延長線上に現在があることが分かる。

    死を前にした人間に対する周囲の戸惑いと、
    「だけど生きてるうちにこれだけは言っておきたい」的な完結願望で
    妻も友人たちも彼を囲んでぐるぐる周る。

    妥協しないで正面から向き合うと、他者との会話はこうなっていくのだと見せてくれる。
    私たちが日ごろ、人間関係の亀裂を怖れて回避していることをずんずんやらかしてくれる。
    理屈を手放すことなく、幾重にも重ねてめんどくさい会話になっていくところが面白い。
    これこそが“櫻井コミュニケーション”だと思う。

    過去のオサムを演じた小野ゆたかさんの振り切れた芝居が面白かった。
    堀靖明さんの眉根を寄せた顔と繰り出す台詞が好き。
    櫻井智也さんは、お堅い職業ほどその人の本音をえぐり出すので、医師は最高!

    欠陥人間に寄せる愛情と悲哀がないまぜになっているところ、
    太宰とMCRの相性の良さを発見して嬉しくなった。


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    2016/07/05 00:06

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