読書劇『二十歳の原点 2016』 公演情報 オフィス再生「読書劇『二十歳の原点 2016』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    素晴らしいの一言!
    「二十歳の原点」(にじゅっさいのげんてん)の作者、高野悦子さんの命日にあわせた公演...4年前に発表し大きな反響を得たという。自分は初見であるが、本当に見事な公演であった。

    某雑誌の紹介で観させていただいたが、当日は13名の観客。実に贅沢であることの感謝と同時に、もっと多くの方に観てほしいという気持が...。

    2017年は京都でも公演を、そんな話をされていた。50年近く前の「時代」のことであるが、今でも何か投げかけてくるものがある。

    ネタバレBOX

    上手と下手にそれぞれ電気スタンドやウィスキー瓶などが置かれた机と椅子が置かれている。床には日記の文章を書いた布が全面に敷かれている。 

    両方の机に女性が座り、上手側の女性が万年筆を手にノートに文字を書き込む。同時に下手側の女性が朗読を始める。日記を付け始めた1969年1月2日(20歳の誕生日:大学2年)には「慣らされる人間でなく、創造する人間になりたい」との決心が記される。この「二十歳の原点」が内省するのに対し、大学に入るまでの「二十歳の原点ノート」はなんと瑞々しいことか。そこには学校生活(部活も含め)が生き活きと書かれていたと記憶している。

    公演...体の背面に無数の赤い紐糸をつけた2人の女性と、その長い紐糸の一方の端を両手の指先に結びつけた2人の男性が登場する。女の動きはあたかも男が糸によって操っているかのようだ。その1人の男は「時代-1969年」、もう1人の男は高野と刻まれた「万年筆」である。そこには時代という運命の中にいる本人。一方はその時代のいる自身を見つめている。そこに緊密な関係がある。
    男は日記のそれぞれの日の背景となったトピックを語り、机の女は、悦子の日記が読み上げる。「独りであること、未熟であること、これが私の二十歳の原点である」という有名な一節が書かれている。

    日記は第一志望であった立命館大学での学生生活を中心に、理想の自己像と現実の自分の姿とのギャップ、学生運動、人間関係での葛藤と挫折、生と死の間で揺れ動く心などが綴られている。それは悦子が山陰本線で貨物列車に飛込み自殺する2日前まで続くのだが、途中から男により「自殺まであと○日」とカウントダウンが始まり緊張感が高鳴る。

    そして強烈な印象を与えるのが挿話した、三島由紀夫が防衛庁で割腹自殺する直前の檄である。

    終盤、2人の男が壁に立てかけられていたビニール傘を広げ、舞台にそれを投げ入れる。そのビニール傘に照明が複雑に反射する。また上手側に花火のような点滅照明も効果的であった。

    “読書劇”であるが、聴覚だけでなく視覚にも訴え、若者の死に至る心の過程を圧倒的な緊張・緊密感で描く舞台、見事であった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/06/29 07:57

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