パラサイトパラダイス 公演情報 ワンツーワークス「パラサイトパラダイス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    現代社会への問題提起
    「衣・食・住」を「医・職・銃(住)」という現代の課題要素に置き換えて、さらに男女という性別の視点、老若という世代の違いという観点を複層させて観せる巧みさ。その描く対象は、集団としては最小の「家族」の単位で描く。

    今回公演のメインは住居...「ひとつ屋根の下に暮らす意味って何? シニカルに描く『共依存する家族』の日常」 をユーモアを交えているが、その問題提起が鋭い。家庭内での部屋割りを巡り喧々諤々する家族。住居内別居、思いがけなく味わう解放感が得られる。一方どことなく遠のいていく互いの気持ち。家族の絆は、案外部屋という空間によって繋がりあっているのかも知れない。それが次々暴露していくような...。

    ネタバレBOX

    舞台セットはパイプを組み合わせた建築現場のような二階家。一階中央は「高見家」のリビングルーム、奥にはキッチンが見える。二階は3部屋、上手側から大学中退の息子、専業主婦の母、キャリアウーマンの娘と同棲相手が使用している。それに書斎(サラリーマンの父が使用)の3LDKの間取り。ワンツーワークスの舞台セットは、空間処理が巧く造作されている。その空間が家族の危うい繋がりをイメージしているようだ。

    梗概…母の母、父の父が同居することになり、大騒ぎの末の家族会議の遣り取りが面白い。手狭と思っていた時が懐かしく思える時期がくる。「存・在」が「空・虚」になった時の気持ち。部屋割りの難しさ、その選択を迫られながら、奇妙な連帯感が感じられる。物語が進むにつれて、独居老人(隣人)の健康・医療の問題も透けて見える(サプリメントの常用)。そして終日、壁に向っての独り言。
    また職業について、大学中退の息子の職業観は父やその父(祖父)の額に汗という時代感覚とは隔世の感といったところ。引き篭もりと思えて、実は起業へ向けて準備している。

    また男女という性別による視点が鋭い。男らしさ、女らしさという「~らしさ」という刷り込まれた意識、そこに内在する役割分担への疑問も投げかける。男は外で仕事、女は専業主婦で家庭を守るという固定観念を、その独特な表現(男=股を開き、威張るような仕草、女=股を閉じ、従順な姿)をコミカルに演じる。演技は安定しておりバランスも良い。物語をしっかり体現しており、安心して観ていられる。

    自室だから自由・幸せという発想が、逆に自由だからシビアな状況になることもある。自由であるが自分で選択しなければならない、いわば自分の運命は自分で決めることになる。自由であるがゆえ心が萎縮し自由の中で孤立を感じることもある。「~らしさ」という意識も不自由にしている。
    その葛藤の先に自立と夢に向かう姿が観える、そんな見事な芝居であった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/06/29 07:51

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