脱出前夜 公演情報 The Stone Age ブライアント「脱出前夜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    バス停と線路
    登場人物全員に共感するものがあり、観ている私も否応なしに揺さぶられる。
    誰もみんな後悔しているし、希望を持ってはその分挫折している。
    弱いダメダメな人間同士が幸せになろうともがく姿が愛おしい。
    無駄の無い台詞と、役者陣の緊張感あふれる応酬が素晴らしい。
    バス停と線路といういわば“人生の点と線”が、巧みな設定となっていて効果的。
    アフリカン寺越、橋本亜紀、末廣和也の安定感が光る。
    他の役者さんたちもキャラがくっきりしていて魅力的。

    ネタバレBOX

    バス停のそばには建設途中の線路がある。
    その先には観光の目玉となるはずの滝がある。
    だがバス会社の社長の“鉄道を走らせる”という長年の夢は、
    大雨による滝の崩落により、とん挫している。
    その線路を見下ろすアパートの2階に住む時生(アフリカン寺越)と薫(土屋咲登子)、
    ある日二人は言い争いになり、薫が窓から飛び降りて半身不随になってしまう…。

    トラックの運転手をしながら小説を書いていた時生は、
    後悔の念に苛まれながら介護の日々。
    介護士を目指していた薫は介護される立場になり、ますます感情的になる。
    バス会社の社員鳴神(橋本亜紀)は
    介護に疲れて母親を施設に入れたことで自分を責めている。
    薫の元カレで彼女を捨ててアパートを出て行った小山田(末廣和也)は
    怪しいセールスを転々としながら自分を見失っている。
    そんな中、市の職員蟹江(河内拓也)だけは、滝の復活を信じて
    もう一度鉄道を走らせようとしている。

    みんな現実に溺れそうになりながら苦しい呼吸をしている感じ。
    現実を変えたくても、身体は言うことを聞かないし、向き合う相手も思うようにならない。
    その閉塞感が痛いほど伝わってくる。
    それを打破するのは、淡々と信じることを積み上げる蟹江のような行動なのだ。
    最後に時生は捨て身の行動に出る。
    それがすべてを変え、薫を変えたのであろうことは、
    ラストに一瞬見せる包帯をした薫の表情で何となく察せられる。
    鉄道も新しい会社の元で建設が続行されることになる。

    鳴神が言うように
    「辛いという字に一本棒を引くと幸せという字になる」(相変わらずこういうのが巧い)、
    その棒一本が私たちにはとても難しい。
    難しいからこそ、幸せを感じて大切にするんだなあ。

    あのアパートが2階だということが分かりづらくてもったいない気がしたが
    バス停と線路、とりあえず出来上がっている駅のホームという設定が良かった。
    人が集まっては帰っていく場所として自然に機能している。

    一瞬たりとも気持ちが晴れやかになれない時生と薫の途切れない緊張感が素晴らしい。
    小山田のキャラが、よくある“戻って来ためんどくさい元カレ”でなくて良かった。
    鳴神のぶっきらぼうな台詞の中に真実を言いとめる重さがあって
    説教臭くない含蓄がある。
    蟹江の、マイペースに信じることを淡々と行動に移すキャラがとても清々しく
    ストーリーの中盤から一筋の明るい兆しになっていた。
    時生に“行動することが何かを変える”ことを無言のうちに示しているのがとても良い。

    私は「いつも今がピーク」だといいなと思う。
    洪水のように幸不幸を味わって、知らなかった時より知っている今の方が
    ずっと豊かに違いない。
    だから次回公演もますます楽しみにしています。







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    2016/06/23 00:00

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  • うさぎライター 様

    観てきたコメントありがとうございます。
    嬉しい言葉の数々、楽しんで貰えてよかったです。
    自分は一年ちょいぶりの舞台を思いっきり楽しんでしまいました(笑)

    2016/06/23 06:29

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