義経千本桜—渡海屋・大物浦— 公演情報 木ノ下歌舞伎「義経千本桜—渡海屋・大物浦—」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    イマジン
    見やすい舞台のつくり、生者と死者の象徴的な衣装替え、ロックなテイストが効果的。
    復讐という名の殺戮を繰り返す、今も昔も変わらぬ負の連鎖を断ち切る
    双方の葛藤を鮮やかに浮き彫りにする。
    選曲がいかにも多田さんらしく、直球ストレートで
    「これでいいのか、日本は」と投げこんで来る。
    しかしあの音量はちと大きすぎやしないか?


    ネタバレBOX

    客席に向かって斜めに傾斜した舞台だから隅々まで見渡せる。
    知盛が碇を身に巻き付けて海へ身を投じるシーンなど、あの奥行きが
    あればこその迫力。

    兄頼朝に疎まれた義経一行は九州へと都落ちの途中である。
    一方、死んだはずの平知盛は典侍局と共に安徳帝をお守りしつつ
    船宿渡海屋を営み、復讐の機会を狙っていた。
    そしてついに義経一行が、その渡海屋に宿を取る…。

    見せ場は歌舞伎の台詞で、ストーリーの大きな流れは現代語でというメリハリで
    スピーディーな展開。
    壮絶な源平の戦いの場面では、討ち死にすると
    羽織っていた着物をはらりと落とし白装束になる。
    生者と死者のコントラストが鮮明になり、無常観が漂う。

    “生きていて欲しい歴史上の人物”は常に「生存説」を伴うものだ。
    彼らの無念な思いを想像して様々な物語が生まれたのだと思う。
    この物語は単に「無念さを晴らす」だけでなく、復讐の連鎖を打ち止めにするという
    未来への選択で終わるところがすごい。
    今世界中で繰り返されている“大義名分を掲げた復讐”を
    知盛のように受け容れ、終わらせることが出来る人間がどれほどいるだろうか。

    多田さんの演出は、ラスト清志郎の「イマジン」が象徴するように
    「もう止めようよ」と呆気にとられるほどストレートに訴えてくる。

    どこか雅な義経や、コミカルな弁慶のキャラに囲まれて
    知盛の壮絶な最期が強い印象を残す。
    確か碇を巻き付けて三度海に沈んだと思うが、その三度とも
    緊張感あふれる場面だった。
    木ノ下歌舞伎でベテランの域にある武谷公雄さんの台詞回しに
    安定感とゆとりが感じられた。

    ただBGMの大音量で台詞が聞き取りにくいのはいかがなものか。
    歌舞伎の音楽的な台詞をBGMと闘うように怒鳴るのはもったいない気がする。
    現代人はロックで大声でスピーディーでなくても、
    歌舞伎の良さを感じることは出来ると思う。



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    2016/06/11 01:25

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