アイバノ☆シナリオ 公演情報 BuzzFestTheater「アイバノ☆シナリオ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    街の風景が...
    人は現在だけを生きている存在ではなく、時空を超えて過去の人と心を通わせることができるのではないか。その仲立ちが長い時間を積み重ねてきた自然や街の風景だと思う。本公演の舞台は北海道網走であるが、その街イメージはなかった。確かに台詞や冒頭の踊りでイメージはできるが、視覚、皮膚感覚として体感できない。
    それでも網走を舞台にする必要があったようだが...。

    さて、物語の構成、演出の妙、役者の演技はどれも秀逸で観応え十分である。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    梗概...網走にあるスナック「かつら」は、地元の漁師や農家の人々などが集うその場所に元女優・相葉しほり が働き始める。 網走は、失踪した菜緒の恋人、哲哉の故郷。「ごめんなさい」という書き置きと、愛ある歌だけを残し失踪。 菜緒は、この街に来た意味を見出すことができるのか、というもの。

    元女優・相葉しほり、本名・井野菜緒(楊原京子サン)は、その職業での再起に賭けていた。その精神的緊張...表層的には相葉のシナリオが展開する。舞台は網走になっているのは、タイトルとの関係であろうか。「ア○バ○☆シ○リ○」は網走と井野菜緒(イノナオ)の掛け合わせ。職業・女優と本名の一人二役、実は本名のほうが物語を成しており、網走の生活で心を癒やす。さらに、先に記した本人の精神的なこともあり、スナック「かつら」のママ川島喜世子(小林佳織サン)、失踪した男の兄・半沢宏哉(阿部浩貴サン)が考えた思いやり。この錯綜したような構成がラストの衝撃と余韻を残し巧み。

    舞台セットは、中央奥に段差のあるカラオケステージが大きく作られ、上手はBOXシートイメージ、下手はカウンターと酒棚。スナックの雰囲気はあるが、11月以降の北国らしさは感じられない。

    この錯綜したような構成は、謎めいた冒頭シーン、実に意味深で失踪と二年後に読まれるラジオの投稿がダブルという色々な場面に仕掛け、工夫をしている。チラシはクロスワードになっているが、本筋を縦軸とすれば、この店で働く女性・伊東朱音(稲村梓サン)の弟・卓馬(シロタケシ サン)の話、地元漁師・豊川雄介(藤馬ゆうやサン)の子供の時の事故、婚約者との関係などのエピソードは横軸として、緩く絡み合う。その関係の必然を強調するように結び目をきつくすると物語の伸縮性が少なくなり、観客の観る自由度を狭める気がする。その意味で適度な関係性に止めたように思う。そこに知的なエレガンスさを感じる。

    この芝居では網走の隣駅・呼人駅の閑散たる風景を言っていたが、網走駅を起点とし上り・下りの7つ目の駅は、愛し野駅(石北線)と止別駅(釧網線)である。この7という数字は「素数」で、1かその数でしか約数できない整数。つまり代替がない...それこそ大切な人を意味する。この芝居の挿入歌「あなたの故郷」の一節...♪こんなにも私あなたの事が好きだったんだな♪。遠ざかったから、いつまでも近しく感じる人がいる。2度と聞けないからこそ、胸の中で自分の支えとなる言葉がある。不器用な人の不器用な生き方が素敵に描かれた物語である。そう、人間の生の滋味を味わうようだ。
    ちなみに、止別駅の読みは、(しべつ)ではなく(やむべつ)と読む。

    次回公演も期待しております。
    実は自分も見切れ席…カウンター内の演技はよく分からなかった。

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    2016/06/09 00:39

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