満足度★★★★
史実的な空想劇
歴史劇のようなシーンもあるが、あくまで想像劇である...史実があるから幻想・架空があるという謎めいた口上に続いて物語が始まる(口上を述べる人だけが、劇中も含め現代の服装。冒険家・時空間の旅人といった役割か)。壮大感はあるが分かり難いところもあり、筋を追うだけに陥りそうである。
鎖国、不平等条約などの台詞から舞台背景は幕末をイメージする。しかし、当日パンフの年表によれば、日本と思われる国は西暦200年代であり、一方外国(外圧)勢力は1000年代~1400年代と時間軸が長い。あくまでこの隔たりの大きな設定に拘ると物語が錯綜してしまう。舞台美術、衣装、小物にいたるまで、時代にそぐわないものばかり登場するのだから...。
この公演は、先に記した幕末の様相が色濃い。そうであれば、2つの点で興味深い。その1は、日本の黎明期の血なまぐさい史実を戯画化し、卑俗でわい雑な覇権争いの劇として舞台化したこと。観せ方として劇場の上空間の大きさを利用した俯瞰...その2は、どちらの勢力も民衆のためという外面正義を振りかざし、その実は己のことばかり。その支配に潜む不条理劇が観て取れる。
それだけに、観客が物語の筋に終始するだけではなく、その展開とともに共振できるような公演であれば...その意味で勿体無いような気がした。
上演時間2時間10分(途中休憩10分)