SQUARE AREA【ご来場ありがとうございました!】 公演情報 壱劇屋「SQUARE AREA【ご来場ありがとうございました!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    サービス満点!体験型の娯楽演劇パッケージ
     真四角の謎の閉鎖空間“SQUARE AREA(スクエアエリア)”に閉じ込めらた、見知らぬ人々の攻防を描くSFサスペンス・ドラマでした。壁のない舞台の四方に客席があり、床の高さは60cm。角には4本の支柱が建っていて、最上部に全支柱を横につなぐ四角い枠があり、柱だけの立方体になっています。

     作・演出・出演の大熊隆太郎さんはパントマイマーのいいむろなおきさん、小野寺修ニさんに師事し、京都でロングラン中のノンバーバルパフォーマンス『ギア-GEAR-』にも出演されています。シンプルな抽象舞台と伸び縮みする紐を使った身体表現が見どころで、パントマイムの群舞による空間の七変化もスリリングです。通路を走る役者さんから風が届いて、小劇場ならではの臨場感も味わえました。

     私は関西出身ですが東京に住んで20年以上になります。普段は耳にしない関西弁の方がフィクションの世界に入りやすいだろうと思い、全編関西弁のスペシャルステージを選びました。それが功を奏したのかどうかは確認できませんが、終演後のワークショップも含めて、サービス満点の娯楽イベントとして楽しむことができました。

     上演が1時間30分で、終演後に約30分のイベント(ワークショップなど)があり、計2時間の娯楽パッケージにしているところが素晴らしいです。劇場入り口の壁には俳優の名前ののぼりが何枚も貼られていて、導入部からわくわくしました。劇場階段の踊り場には、観客が自由に感想を書き込める色紙とカラフルなペンが置かれていて、なんと色紙は6枚貼り合わせた立方体(=SQUARE AREA)になっていたんです。観客が作り手とともに作品と公演に参加して、一緒に楽しめる仕掛けをたくさん準備してくださっていることに感動しました。

     東京公演は3都市ツアーの最終地でした。東京公演専用のチラシを作成し、劇場への折り込みも活発に行っていました。劇場に入ってすぐ突き当りにあった黒い壁には、愛知公演、三重公演を観たリピーター観客が違う角度の客席を選べるように、ステージの向きを明記した各地の座席表が掲示されていました。なんて親切なんでしょう!

     終演後に大熊さんと制作の西分綾香さんにお話を伺いました。西分さんからは「CoRich舞台芸術まつり!の最終選考に残ったおかげで東京公演にお客さんが大勢来てくれました」という言葉をいただきました。終演後のロビーでは、売り子の皆さんが観客に対してあまりに熱心に商品をお薦めされていたので、購入して応援したい気持ちになりました。強い意志を伴う行動は実を結びますね。

     ※東京公演では千秋楽の4/10(日)朝10:30開演の追加公演が決まり、ステージ替わりゲストは王子小劇場・芸術監督の北川大輔さん(カムヰヤッセン)でした。「CoRich舞台芸術まつり!2016春」最終選考のライバル同士で、なんと公演期間も丸被りだったにもかかわらず、壱劇屋を王子小劇場に呼んだ劇場職員として一肌脱いだ北川さん…男前!しかも前売り完売という成果を上げました。

    ネタバレBOX

     開演前に大熊さんがどしどし観客に話しかけ、そこまでしなくてもいいのでは…と思うほど(笑)和ませてくださいました。でも開幕してからは空気が一転。5分で神妙かつダークな雰囲気の異世界へと連れて行ってくれました。

     見ず知らずの人々が突然“スクエアエリア”に放り込まれ、閉じ込められます。壁にある目に見えないノブを回し、ドアを開いて次の部屋に行くと、また同じスクエアエリアに戻ってしまうなど、観客に劇中のルールをわかりやすく説明し、少しずつ物語へと誘導していくのが巧み。短いセリフの応酬がリズミカルで、ギャグが沢山ちりばめられているので、大仰さや深刻さは控えめになり、軽やかに進行します。「残り50分」「残り10分」などと制限時間をカウントダウンしたり、謎の手紙を降らせたり、スリルを感じさせる仕掛けが周到です。

     スクエアエリアの中で白いゴム紐を使って立方体を作り、人が入ったり出たりして変形させていくパントマイムは、大道芸、群舞として見ごたえがあり、物語とリンクしているのもとても面白かったです。白い紐をスクエアエリアに巻き付ける演出も良かったですね。ただ、俳優の演技およびパントマイム中の表情や動きについては、まだまだ改善、洗練の余地が大いにあると思いました。パントマイムは、役柄を演じたまま、さらりと、華麗に見せて欲しいです。

     登場人物は皆、私生活で何かしらに追い詰められており、その原因が解消されるとスクエアエリアから脱出できますが、全員が脱出できなければ、また元に戻ってしまうという設定でした。彼らをつなぐ接点は病院に入院中の少女、小町(小刀里那)。どうやら入院中にお世話になった人々に恩返しをしたいという彼女の思いが、人々をスクエアエリアに召喚したようですが、そのあたりは上演中にはあまり理解できませんでした。最終的には相互に助け合いをすることで、全員が脱出します。他人を差し置いて自分だけ助かろう、自分だけ得をしようという生き方はみっともないです。誰一人置いてきぼりにせず、全員で幸せを目指す姿を描いたことが素晴らしいと思います。

     強盗役とジャガー役を演じる、ステージ毎に異なるゲスト出演者は、塩原俊之さん(アガリスクエンターテイメント)でした。セリフと演技の両方で下ネタ炸裂…。私はもう40代の観劇オタクですから(苦笑)、慣れたものとはいえ、ドン引きしました。大熊さんに「20ステージ中、“最低”のジャガーでした!」と紹介されていて、さもありなんと思いました。ゲストの当たりハズレは運ですので気にしません(こりっち審査員の余裕をかましておくぜっ)。

     俳優の中で動きにキレがあると思ったのは、幾度となく押し寄せる便意に困りまくる河村役の河原岳史さんでした。

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    2016/05/16 23:12

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