満足度★★★★★
X-QUEST:「神芝居~アリス・イン・ギガニッポンノワンダーランド~」
ルイス・キャロルの「不思議の国アリス」にお馴染みの日本の昔話を混ぜ合わせ、再構築した物語はどこか懐かしくも全く新しい世界が目の前に繰り広げられる。
アリスが迷い込んだのは、不思議の国ではなく月人(つきんちゅ)と海人(うみんちゅ)が相争う世界。そこでは、ウラシマとカグヤヒメの使いと名乗るものたちが代理戦争をし、一方ではウサギとカメがゴールを目指すのだが、そのゴールに待ち受けているのは衝撃の事実。
膨大な情報量と言葉遊び、ダンス、殺陣。セットは何もなく、真ん中に四角いリングのような舞台があり、観客はその四方を取り囲む。
それはまるで、クロード・ルルーシュの映画「愛と哀しみのボレロ」で音楽の高鳴りと共に、神憑りのようなトランス状態になるジョルジュ・ドンの踊る「ボレロ」のシーンを思い出させた。
四角い舞台は神の掌。その掌の上で、人も月人も海人もウサギもカメも、歴史という壮大な芝居を神によって踊らされ、演じさせられているのではないだろうか。
紙芝居のように、様々な場面が息も吐かせぬ速さで捲られ展開して行く。
そして、観て行くうちに気づくことがある。タイトルのギガはギリシャ語で「巨人」、PCやスマートフォンの容量の単位では大容量の意味で使われるが、戯画でもあるのではないかと。
戯画と言えば「鳥獣戯画」。カエルとウサギが相撲を取っている絵図が有名であり、「鳥獣戯画」とは当時の思想を反映した風刺を動物や人を戯画化しているものであり、「不思議の国のアリス」に多数引用されているマザーグースもまた、伝承、童謡でありながら、紐解くと底には恐い意味や由来を含む物が多い。
X-QUESTの「神芝居~アリス・イン・ギガニッポンノワンダーランド~」は、四角い舞台の上(それは、神事である相撲の土俵にもつうじるのではないか。)で、繰り広げられる現代の「鳥獣戯画」だと感じた。
こう書くと、難しく重い内容の舞台のように思われるが、これを、言葉遊び、ダンス、殺陣と華やかな衣装、美しい照明と音楽と笑いで、最高に面白いエンターテイメントとして紡がれて行く。
そして、笑いながらじわじわとこの舞台に散りばめられた皮肉と諷刺と水底にゆらゆらと揺らめく、この世界も歴史も実は、神の巨大な掌の舞台で踊らされ、演じさせられている「神芝居」なんじゃないかという事に気づいた。
殺陣も迫力があって面白くて、役者さんたちの動きかがとてもキレイでキレがあって、個人的には、塩崎こうせいさんと小玉久仁子さんの動きがとてもかっこよく、きれいで、高田淳さんのウサギの目線と目の表情が艷っぽかったのがとても印象に残っている、笑えて、観終わったあとに、頭と心の中でずっと反芻してしまう舞台だった。
文:麻美 雪