慙愧 公演情報 643ノゲッツー「慙愧」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    あの時あれさえしなければ…
    良く出来た会話劇で大変楽しかった。
    役者さんが皆揃っており、畳みかけるような台詞の応酬も滑らかで素晴らしい。
    人は誰も大なり小なり痛恨の失敗をしでかすものだ。
    それをほろ苦く、優しく描いて、笑いのタイミングもGood。

    ネタバレBOX

    大人気テレビドラマのロケ地だった教会へ定期的に集まる熱烈なファンたち。
    今日もお気に入りのシーンを再演して盛り上がっているところへナイフを持った強盗が…。
    取り押さえて尋問をするうち、次第にメンバー同士の秘密や嘘、軋轢が暴露され始める。
    SNSでつながるだけの、この会を主催しているのは一体誰なのか、
    自宅に直接届けられるお知らせや写真はストーカーの仕業なのか、
    疑惑が疑惑を呼び、思わぬ展開になっていく…。

    下着を拾っただけなのに下着泥にされてしまった男とは、哀れな強盗のことだった。
    大手出版社に勤めていた彼は、この一件で職を失い、警備員のバイトをしながら
    父親の介護にも疲れて、発作的に強盗を思いつく。
    そして入ったところが今は使われていない、定期的にファンが集まるだけの教会だった。

    SNSだけではない、人はどこまで本当のことを話しているだろうか?
    学歴も勤務先も、年齢も結婚も、それ全部信じてよいのだろうか?
    疑われては必死に誤解を解き、疑っては説明を求め、カッコ悪い自分をさらけ出して
    メンバーと強盗はぶつかりながら少しずつ距離を縮めていく。
    結局、こういうリアルなぶつかり合いなしにつるつる交わすコミュニケーションなど、
    所詮表面的なものにすぎないということを強く感じさせる。

    話がテンポ良く、しかもまんべんなく転がって、次第に核心に触れる辺りが上手い。
    よどみない台詞が共感を呼び、“多数を相手にわかってもらおうとするしんどさ”が
    リアルに伝わってくるところが秀逸。
    この点で下着泥の永山盛平さん、教師の音野暁さんが素晴らしかった。

    この“等身大のうじうじ”を共有しようという作品、私は好きです。
    で、私のような小心者は、こういうベタなラストを見て安心して帰りたいのも事実です。

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    2016/04/30 21:09

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