BAR アルマ 公演情報 劇団光希「BAR アルマ 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    古き良き時代を彷彿とさせる
    Barアルマのマスターとその娘、そこに集う人達によるヒューマンドラマ...しかし、その物語の展開がストレート過ぎるような気がした。
    舞台セットは、Bar店内を思わせる作りで、この話の重要な位置付を担っている。(上演時間125分)

    ネタバレBOX

    セットは、上手に少し高い段差のあるBox席、下手はカウンター席、中央は客席側を空けた囲み席。もちろん、多重空間を演出するため、客席前のスペースを店外の道に見立てること、店内の段差あるBox席は外の公園か広場のベンチ、または料理教室先生・森宮香苗(森下知香サン)の家(室内)をイメージさせる。そのシーンの雰囲気は照明の切り替えという演出の巧みさ。

    Barアルマはスペイン語で「魂または心という意」であることは、ラストのナレーションで紹介される。その言葉を彷彿とさせるような物語であるが、説明文にあるマスターの件ついては、すぐ解る。

    主人公は店の20歳の娘・内川たまき(村松幸サン)、みんなから好かれる娘に育っている。この父親、体は男であるが、心は女という性同一性障害。母親は主人公が2歳の時に浮気をして家を出たままという設定である。表層的に捉えれば、設定の特異性と家出した母(実は森宮香苗)との対面に至るストレートな感動物語(予定調和であるが、それがこの劇団の特長で心温まる秀作を創り出している)。それを際立たせる常連客の恋愛騒動という彩り。この彩りの小話が本筋を霞ませるほど色濃い。
    この店に集う常連客が、自分の思い思いのスタイルで飲んでいる。大人の隠れ家的存在が、このBarである。しかし近いうちに再開発で取り壊しになるという時限要素を取り込むことで、話にテンポを持たせる。

    さて、観念的であるが、「母」であることより「女」の道を選び、自分(たまき)を置いて家出した母に対して簡単に心が氷解して行くのか。それほど会いたい気持が強かったのか。そして店にさり気なく通ってくる、それを知った時、心境は相当複雑で堪えられないように思えるのだが...。この娘の寛容さに違和感を覚えたというのが正直なところ。

    筆を進めて、フッと父”性”の妙味が効いているのかも...そんな気もする。
    毎日と言っていいほど、アメリカ大統領選に関する報道がされている。その候補者の一人であるヒラリー・クリントン候補は、米国東海岸にあるセブン・シスターズと呼ばれる名門女子大一つ、ウェールズリー大学(マサチューセッツ州)卒である。最近、この女子大学群のうち2校は共学化し、心と体の性が一致しないトランジェスターの受け入れを決めた。それほど社会的認知と寛容さが広がってきたということ。このBarマスターにして父の存在が受容の伏線であったとすれば、随分と思慮深い作品である。そして、この店が母そのもの…その内に父、兄姉のような常連客に支えられて“いい子”に育ったのだろう。店こそが人の「魂」なのだから。

    最後に、自分が観た回は噛みが多いような…。舞台という板の下は、地獄かもしれない。それ故、そこは踏ん張って欲しい。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2016/04/30 10:02

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  • タッキーさま
    返信ありがとうございます!
    そうなのですよ!
    私自身も、可愛い盛りの2歳の娘を置いて、離婚して出るのはどうなんだろう、と、正直悩んだのですが、これはおそらく完吉のためだったのだろうと、自分を納得させました。
    長年世間に自分を偽って生きることに苦しんでいた彼のカミングアウトを後押しするための離婚だったのかな、と。
    そして、彼の最愛の娘を奪っていく事よりも、彼に託して自分が身を引く方が、彼のためにも娘のためにも幸せだと判断したのではないか、と考えました。
    そのため、その後二人と一切連絡を取らず、母親の痕跡を消す道を選んだのではと。
    でないと、離婚した後の香苗の悲嘆ぶりも、自分のことよりも相手のことばかり考える香苗の性格、という設定ともつじつまが合わなかったからなのですが…
    でも、いずれにしても、そんな複雑な事情をお客様に伝えるのは難しかったですね。
    説明不足であったと、反省しています。
    どうもありがとうございました(*^^*)

    2016/05/12 12:29

    みかん さま

    こちらこぞ、丁寧なコメントありがとうございます。
    まずは、公演お疲れさまでした。

    伝える側(劇団)と観客の受け取り方の違い、やはり演劇は難しく奥深い。そこが面白いところ。それにしても、可愛い娘を置いて家を出るのは、よほどのことだったのでしょう。

    コメントにあるような意図を教えていただき、嬉しく思います。
    どうもありがとうございました。

    次回公演も楽しみにしております。

    2016/05/11 22:04

    タッキーさま
    いつも丁寧なコメント、どうもありがとうございます!
    おっしゃる通り、この回は特に噛みが多く、大変失礼いたしました。
    次回こそは、このようなことのないよう、日頃から鍛錬を重ねていきたいと思います。
    ご指摘の母娘のシーンですが、この時、母の香苗が「私は、母としてよりも女として生きる道を選んだ」というセリフがありました。作者によると、これは、母との再会に戸惑う娘、たまきをあえてつきはなし、娘の思いを断ち切るための、香苗の嘘だ、ということでした。それを言われたたまきは、「それは私のことを思った優しい嘘だ。お母さんの本当の思いを聞かせて」と答える、そういったシーンだそうです。
    ところが、母役の私が、つい気持ちが入りすぎたのか、どうにも誤解をさせてしまったようです。嘘なので、浮気をして出ていったわけではなく、娘と父親の生活を乱すことのないように、自ら離れていってしまった、というわけなのです。わかりにくくて、申し訳ありませんでした。
    今後は、演技も台本も十分精査し、本来の意味を伝えられるよう、気をつけたいと思います。
    どうもありがとうございましたm(__)m

    2016/05/11 13:17

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