期待度♪♪♪♪♪
海
自然の厳しさ、優しさを最初に教えてくれたのは海であった。生まれは神戸の山の手、阪急六甲の更に上手だが、常に海との縁がある。高校は水産高校だし、実習船の船長にも恵まれた。ヨットと同じほどの復元率を持つ実習船で台風に向かって船出した時には、アッパーブリッジより高い波に襲われ、船は大げさでなく木の葉のようにもまれた。ビルジキールのきしむ音は今でも忘れない。船が沈まないと確信したのは、鼠が船内に残っていたからである。沈む船からは鼠が1匹もいなくなるというのは船乗りの常識。
一方、海の優しさは、南十字星を臨む、南洋の海でのこと、新月の晩、ワッチに立った。指先も見えないような暗闇で舳に立った。満天の星座・星屑と夜光虫が溶け合って船の舳先は、闇を割って進んでゆく。空と海の境目が分からない。自分は宇宙の只中を航行している。たった一人、目を見開いて、その模様を眺めている人間だという気がしていた。
2016/04/21 22:30
ハンダラ