パピヨン 公演情報 パピヨンパピヨン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    花四つ星
     観客は、入場券の代わりに4桁の数字が書かれたワッペンを渡される。劇空間に入った段階で囚人という訳である。

    ネタバレBOX


     絶海の孤島に設けられた死刑囚専用監獄。この房に収容されているのは、3名。元革命運動の女性リーダー、既に初老であるが無論インテリ。優秀な歯科医であったものの患者の歯を全部抜いてしまい、うち3名を出血死させた50代の男、このほかにも監獄で同じようなことをしたとの情報がある。3人目は、この子を産み落とすとこと切れた母の代わりにこの房で育てられた18歳になる少女。単にそれが理由で育てられたというより、生母が悪魔と恐れられた為に引き取り手が無かったとされる。素直で優しく中々頭も良い娘に育っているのだが、外界に出たことは一度もない。
    この監獄が置かれている島の自然は乏しく緑も殆どないばかりか、動物を見かけることも稀で、時折カモメの鳴き声がするくらいなのだが、換気口の鉄筋に蛹が見付かった。どうやら蝶の蛹らしい。娘は、飽きずに眺めている。
     が看守が、男の囚人番号を呼んだ日、彼が戻ってくることはなかった。而も同じ日、食堂で給仕係りをやっていた囚人が首吊り自殺を遂げる。少女は二人の死を嘆くが、元革命家は冷たくあしらおうとする。それは本心からというより、自分が刑死した後も少女に生きていて欲しいと願うからである。だがこの行き違いは、実の母と娘のぶつかり合いのように激しい葛藤を生む。革命家持っている優しさと若い感性がその感受性を素直に開花させて持つ優しさがキチンとぶつかり合う様が描けている点が良い。革命家を演じた役者、少女を演じた役者、どちらも上手い。歯医者を演じた役者も上手いのだが、若干声が高いのが、気になった。まあ、これは致し方のない所だが、役としては、声の凄味があった方が、自分のイメージに近いというだけのことなのだし。
     蛹が羽化しようとする朝、革命家が呼ばれた。蛹はアサギマダラになって海の彼方へ向かった。革命家が少女に声を掛ける。蝶のように海を越えて行け、と。
     不毛の空間に蛹が齎した淡い夢を、監獄に閉じ込めた美しい作品だが、革命家が少女に掛けた言葉の意味するものによって、今作は、観客への呼びかけにもなっていよう。
    立ち上がれ虐げられた総ての者よ!

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    2016/04/18 16:04

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