if 公演情報 TEAM 6g「if」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    観応えあり
    タイトルから”仮定”に基づくミステリードラマ。その軽快なテンポと推理する面白さは秀逸である。この公演の当日パンフに主宰・脚本の阿南敦子 女史が「(前略)...この情報過多の時代に、自分の知らないこと、溢れる情報に流され真実を見失ってしまっていること、そんなことがたくさん存在していることを知りました。(後略)」、と記している。この文章を読んで、最近亡くなられたミステリー作家・夏樹静子さんのことが書かれた記事を思い出した。たしか、ご自身は就職したことがなく世間知らず、社会をよく知らない、という劣等感が人に聞くという取材力になっていた。その作風には市民社会では一人ひとりが「知ること」が大切であるという。そんなメッセージ性が伝わる。翻って、本公演は今までのTEAM6gの作風と趣きが違い、いや今までもメッセージ性はあったが、それ以上に強く感じる。その描いた内容は、権力機構...その象徴として警察機構を取り上げる。しかし、その捉え方が一方的に観えたのが気になるが…。

    ネタバレBOX

    連続幼女(誘拐)殺害事件を追う某新聞社。近日中に廃部署になるところにスポーツ部署から異動してきた女性記者・篠原泉(阿南敦子サン)の視点から見たミステリー、サスペンスドラマ。栃木県足利市を中心に10km圏内で起きた5件(1979~1996年)の事件を再調査する。その進展に伴い、当時の所轄警察署のずさんな捜査(信頼性が小のDNA鑑定、自白の強要など)が浮き彫りになる。

    この舞台はd-倉庫という天井が高い劇場の特長を活かしたセットを作っている。左右非対称の階段状(床面の緑色は「草」か)になっているが、そのイメージは殺害現場である土手を示しているようだ。もちろん、新聞社オフィス、警察取調室、被害者宅などいろいろな場面に姿を変える。そして役者陣は登場人物のキャラクターをしっかり立ち上げ、安定した演技を観せてくれる。

    被害者家族の悲しみは、それを体験した者でなければ理解できない。犯罪...その筆舌しがたい悲しみ、悔しさ等々を伝える。その描きが涙を誘う。

    気になるのは、確かに「冤罪」はあったかもしれない。同時に、この公演で繰り返し出てくる台詞...「想像」すること。その先にあるのは、加害者や被害者家族にマスコミは取材攻勢をかけてきたのではないか。それは新しい材料(ニュース素材)がなければ、警察発表を信じるだろう。そして容赦なく取材したと思われる。公演では、再調査を進める竹内誠(吉成浩一サン)の動機が弱い。廃部署での起死回生のスクープ狙いでは単純すぎる、純粋に人権派気取りであれば面白みに欠ける。表層的には警察の問題的捜査、組織的問題(所轄縄張り意識)が描かれているが、同時に被害者の痛みを”知る”マスコミの姿勢が見られたのか...。
    報道に限らず、ネットで拡散するデマ、詐欺など騙される恐れはいつもある。だから、何が本当で、何が嘘なのか自問する必要があろう。
    「騙されてたまるか 調査報道の裏側」(清水潔 著)

    最後に脚本・演出・演技はもちろん、舞台技術の音楽・音響や照明(茂みの陰影、街夜景・星空など)は見事であり、印象・余韻付けが巧い。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/03/29 19:40

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