さよならに橙色が霞む(ご来場ありがとうございました! 公演情報 劇団えのぐ「さよならに橙色が霞む(ご来場ありがとうございました!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    珠玉&珠玉の連作のような
    観劇した日は、すでに春分の日を過ぎていたが寒かった。本作は劇団の番外公演として、2人の作・演出家(松下勇サン、佐伯さやかサン)が同じタイトル・同じ場所でそれぞれの物語を書いている。同じように見えて違って見える橙色が、今回の「えのぐ」色である。その内容は気温は寒いが心は温かくなるような話である。春分の日(2016年は3月20日)の前後3日間を合わせた7日間を「彼岸(ひがん)」というが、この時に“ご先祖様”の墓参りをする人が多いと思う。そして彼岸に欠かせないのが、牡丹餅(ぼたもち)である。この包まれた餡(あん)、その素になる小豆は邪気を払うと考えられているそうで…。このチラシにある舞台セット、駅を比喩として人と人の出会いと別れがしっとり描かれる珠玉な両作品である。なお、別々の物語ではあるが、そこはしっかり連作風にまとめる。
    (各45分、途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台は本日廃線になる某ローカル線の駅(道曳-みちびき)ホーム。そこにベンチが置かれている。駅の雰囲気を出すため防護柵や白線。

    まず松下作品…主人公の男(25歳)が、友人(医師インターン)に余命が後わずかと告げられ、4人の幼なじみとの思い出を回想する。疎遠になったがゆえに、気になり身近に感じる人、2度と聞けなくなるから、胸の中で反芻する言葉がある。不器用であるから、あえて深く交わらない。しかし出会いがあって別れるまで、そこに流れた時間は永遠の一瞬として照らし出される。もう夜明け...そこに見える朝焼けは橙色である。

    次に佐伯作品…こちらも余命がわずかという婦人を、死神専門学校の生徒があの世へ導くまでを描く。この生徒(学籍番号の末尾が…9)がなかなか卒業できない。要は寿命がきている人を導けず落第している。導くためには、その人の想いを叶えること。さて、この婦人は亡くなった夫を待ち焦がれている。既に亡くなっていることは承知している。はたして、この婦■◇人の望みを叶え無事卒業できるか。鐘が鳴る夕方、そこに夕焼けの橙色がまぶしい。結果はルール違反があり、以降33回も落第している。

    さて、「9」は、「終わらせない」「できないことだらけの現実を受け止め、失敗したり苦しんだりしつつ、安易な幕引きに頼らない生活を送る」こともあるという。中国では、永遠を意味する「久」と同じ発音の「九」が好まれるらしい。そして落第を続けること33回を数える。それは三回忌、七回忌などの回忌上げの回数と言われ、個人から”先祖“になることを意味するという。まさしく、公演にある生生世世のようである。

    観たことがあるシチュエーションであり、重厚感があるわけでもない。しかし、逆に優しく見守られているような安心感がある。それは、強調した色ではなく、淡く霞むような…そう橙色という印象である。
    最後に冒頭シーン、少し強引に思うが、この駅で自殺を図ろとした少女がこの話の繋ぎとなる。それは是非劇場で…。

    次回公演を楽しみにしております。

    0

    2016/03/26 16:51

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大