満足度★★★★
思索的な「超」ウェルメイド・プレイ
凄い戯曲である.
綿密な取材によって掘り起こされ,緻密に計算されたすばらしい戯曲であることは,誰もが理解できるだろう.
抽象的で難解な物理学・数学理論,祖国と民族の問題,家族の問題,研究者としての功名心,師弟関係の思い出,宇宙論,研究者の倫理等々,様々な次元の話題がそれぞれ他の次元の話題の暗喩として従前に機能している.
台詞の量は膨大で,驚異的な情報量がそれぞれ関連しあって,それが最後には深い虚無へと集約されていく.
重厚長大で,役者のみ成らず観客にも集中力を強いる芝居である.しかしそのテキストの豊かさに圧倒されるのには心地よい充実感もあるはずだ.この凄さは味わう価値は十分ある.