キミが読む物語2016 公演情報 ナイスコンプレックス「キミが読む物語2016」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    命の重さと愛の深さを思う
    本は、昨今のネットや電子書籍の普及でその接し方も多様化してきている。通勤、通学の電車の中は、多くの人に囲まれていても、一人で過ごす場所でもある。ボッーとすることも出来る(ラッシュ時は大変)が、集中して何かを感じ取ったりすることに向いている場所と時間であろう。本公演は、同じ一人と言っても、その人を想って書かれた本が中心に物語が展開する。観客層は幅広い世代が見ていたようだが、あちらこちらですすり泣きの声が聞こえた。瞼という堤防を簡単に乗り越えて洪水するが、そんな降水なら歓迎であろう。
    なお、一部キャストの声が聞き取りにくいところがあったのが残念。

    ネタバレBOX

    映画「あなたはいい子」(2015年・呉美保 監督)では、小さい時のトラウマで外面は良いが、内面は葛藤の日々、というものであったが、この公演も自分のことが真に理解されず、勝手(虚像)に作り上げられる不自由、窮屈さというジレンマがよく表されていた。

    舞台セットは、紗幕に開いた厚手の本が描かれており、場面によって舞台の前後(奥)が仕切られる。基本的には奥スペースでのシーンは、主人公女性・水葉(田上真里奈サン)の母親の入院(癌闘病)生活・妊娠し産む決心ををするシーン。

    客席側は、紗幕前のメイン舞台では、生まれた水葉が周りの目を気にしている自暴自棄の姿。そして亡き母が子への想いを綴った本をゴーストライター・佐藤秀雄(末原拓馬サン)が執筆しているが、こちらも訳ありの人生を送っていた。こちらは、小学生の時に父親が病死し、約束したことが果たされなかったことへの拘り・憤りという感情が整理できない。その思いと仕事で書いた記事へのトラウマ。

    プロローグで先の母親が娘・水葉を想って書いた本を求めにやってきた少年。この重層したような話が本筋である。一見複雑そうな展開に思えたが、その演出は、物語を分かり易く観せるために紗幕を使用している。

    母親の想いはベストセラー小説になるが、その描かれた少女は逆に”いい子を演じなければ”という世間体、自分という人間が理解されないという悩み、その悩みに同化するようなゴーストライターの執筆姿勢。本当の自分とは、その向き合うまでに成長する姿の感動する。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/02/27 15:23

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