フェードル 公演情報 劇団キンダースペース「フェードル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    分割劇のようで...
    現代的にみれば、不義・不倫は芸能界や不適切恋愛の国会議員の行動を指して、下衆な行いとして糾弾されている。
    この公演にあるのは、王妃が義理の息子への狂おしいほどの恋慕を抱いているが、その息子は他の女性を愛していることを知り、嫉妬するという、典型的な昼メロドラマ。しかし、この下衆のような行為も悠久の時を経ることによって、芸術的、文学的な価値が生まれるらしい。時間という何物にも変えがたいフィルターによって観るべきもの、感動すべきものへ変化する。この根底にあるのが、男女の愛(愛欲・純愛など様々)であろう。これは古今東西変らぬテーマ性を秘めていると思う。当人だけの関係であれば問題ないが、そこに第三者が絡むと喜劇になり、または悲劇に変る。

    本公演は、古代西欧と現代東洋(日本)の異なる次元における恋愛模様を同空間で演出しているが...。

    ネタバレBOX

    舞台セットは、古代神殿をイメージさせるような重厚感ある造作。中央が祭壇への階段、神殿柱…舞台奥には大型スクリーンがあり、海をイメージさせる映像と音響。舞台下手、神殿の一部に現代のOL一人住まいの部屋を切り出す。そこにメインルーム、シャワールーム、TVなどがある。フランス戯曲(初演は1677年1月)を題材にしたフェードルは、表層的には男女の愛憎、当時の権力志向と結びつけて観応えがあったが、現在OL篇は何を描こうとしたのか?

    梗概は、説明文から「ペロポネソス半島トレゼーヌにあるテゼーの宮廷。王テゼーの後妻フェードルは生まれながらにヴィーナスの呪いを受け、そのためになさぬ恋の虜になることが運命づけられている。義理の息子イポリットに恋をした彼女はその苦しさから死を思う。イポリットも又、生みの母の血筋を持つ捕虜の娘アリシーに恋をするが...。」

    日本も85年ほど前、1930年に谷崎潤一郎は最初の夫人と離婚したが、その夫人は谷崎の友人・佐藤春夫と結婚することになり、3人連名の挨拶状を新聞に発表した。妻譲渡事件は有名であるが、その1年前に新聞小説「蓼喰う虫」で、その状況を同時進行形で小説に仕上げた。流行作家や詩人が今では下衆と言われるような、非常識で淫らな恋愛沙汰を起こしている。芸術(家)というものは、ひかれた軌道をまっすぐ歩めないような情熱と野心がなければ大成しないのであろうか。なにしろ堕落の軌跡を描いた私小説にして耽美的でマニアックな描写で注目されたのだから。

    このフランス、日本の歪な恋愛物語に関連性なりが垣間見えれば面白かったのだが...。そして、当日パンフで構成・演出の原田一樹 氏が「『言葉』によって、恋は『生贄』にされる。彼女は『恋』を、『恋』のままに引き受けたかった。もちろん私たちは、その悲劇の中に、あらゆる『言葉』に踊らされる私たち自身を感じなければならない。」(真意が伝わる抜粋か心配であるが)と。それに呼応するか分からないが、「言葉」中心で生きているようだが、その事(物)と一緒に生きており、人と人、そして事(政治・権力)が感情をも左右する。それが恋愛以外の人間ドラマとして観られて面白かったが、繰り返しになるがOL物語のほうが...。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/02/27 14:54

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