Stay of Execution 公演情報 メガバックスコレクション「Stay of Execution」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    慟哭...心魂震える秀作【Bチーム】
    「神は細部に宿る」という言葉を聞く。少しネタバレになるが、地下鉄・渋谷駅構内と車両が舞台セットになっている。車両のドアや窓ガラスは既に無くなっている。その枠を額縁にしてみれば、その中には細密で実にリアルな空間が出現していた。その造作はキャスト、スタッフによる手作りだというから驚きである。今回はSIM STUDIO(自分は初めてのスタジオ)での上演であり、地上4階スタジオがいつの間にか崩落した地下40mへ。そして駅構内には、さり気なく過去公演(HOTEL CALL AT)のポスター等が貼られているのが見える。
    この公演、神に召されるのか、生きるこことは、心魂震える内容であり、7か月ぶりの新作公演は観応えがあった。
    3・11東日本大震災の鎮魂歌のような…。

    ネタバレBOX

    梗概は説明を一部引用し「崩壊した地下鉄の 限られた空間でいくつかの魂が目を覚ました。 やがて 彼らの前に来世からの使者が現れ 無の世界へと誘う 現世への未練を残し、 新たなる旅立ちを強く拒む弱き者達 「Stay of Execution」 使者が宣言し、旅立ちに101日間の猶予が与えられた 限られた時間と空間 偽りの肉体と薄れゆく感覚 自由は虚像、希望は幻影 望んだはずの猶予の時は、 次第に耐えるだけの驚愕の時間へと変っていった」と。

    この公演の最大の見せ場は、黒木(川井記章さん)の長台詞の慟哭シーンであろう。失って初めて気づく大切なこと。自分たちは既に亡くなっており、その生ける屍はまだ死を受け入れられない。生きている時には真剣に考えなかった、大事に思わなかった出来事が、失って気づく。失敗・悔悟・苦悩など愚かしいことの繰り返し。そのつど露になる感情、それを持て余すこともあるが、それが人間であり生きている証でもある。限りある時間や命だから大切にする、そんな当たり前のことが日常生活の中に埋没し忘れてしまっている。そんな長台詞が身も心も震えさせながら響きわたる。映画でいえばワン・シーンであり、それまでに多くのフィルムを回したと思うが、この芝居もこのシ-ンを効果的に観せるための過酷 な状況の数々。状況が外形だとすれば、それを介して人間の在り様を知ることになる。そして人と人の関係(親子、恋人など)も顕著になる。

    地下という時間や月日、天気なども分からない。外界と遮断された閉鎖環境の中で、キャスト一人ひとりが言う…どう生きるか。何をしたいのか、また、したかったのかの輪言辞。絶望の淵に立って思うこと...「人間とは?」をワイス(井上正樹さん)へ激白し、無の世界へ...感動した。
    今回は、大里冬子さんの演技を観るため、Bチーム観劇。他劇団の公演を観ているが、やはり所属劇団では生き活き、いや芝居では死んでいるけど上手い。

    閉鎖空間での緊張感と濃密な会話は圧巻である。それを体現するキャストの演技も素晴らしかった。冒頭は声も小さく聞き取りにくいところもあったが、ストーリーが進むにつれ解消する。

    舞台セットは細密であるが、車両の外から俯瞰するような演出であるため、駅構内部分が無くなったドアや窓からしか観えない。そのため座ったり、また上手、下手に寄ったシーンは観えない、観にくくなるのが勿体ない(客席、特に最前列は舞台より低い位置)。優れた公演は細部まで鑑(観)賞したいものである。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/02/24 00:36

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