カゲキ・浅草カルメン 公演情報 劇団ドガドガプラス「カゲキ・浅草カルメン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    浅草東洋館へ初潜入
    喜劇の聖地・浅草は漫才の常設小屋・東洋館、その入口には「客引き」をやる作演出・望月氏の姿あり、客席をみれば五十がらみのおじさんおばさん、はたまたオタク風の者ら、「場末」的演出に総出で一役買ってるよな劇場にて、これも浅草の地に似つかわしい歌あり踊りあり、サービス精神に徹した芝居が飲食自由・嬉しい休憩付きで上演されていた。
     ドガドガプラスは昨年唐ゼミに作品提供したのが望月六郎氏(観れなかったが)、「芝居もやってるのだ」と知って今回初めて観劇できた。
     序盤は劇団が擁する若い役者がキャッキャと元気にやってる、、とだけ目に映っていたが、中々どうして徐々にそれぞれの役柄が見えてくると、それぞれがうまい。出はけも多くテンポの早い芝居だが台詞は澱む箇所一つなく、役にハマり切って小気味良いシーンも多々。もっとも皆、艶やかな着物を召して「女」を売り、男もホスト並みに化粧と仕草で「男」を売る、女郎に悪党のダークヒーローな演技の範疇に留まるとは言えるが、華ある役者にしか出来ないとも言える。 
     「お話」は一本筋が通って破綻は無いが、幕末とカルメンというイメージの飛躍ぶり、舞台に漂う雰囲気は唐十郎に近い。

    ネタバレBOX

    カルメンの物語が幕末を舞台に展開。主な登場人物が、悪党弾左衛門一味、島流しから戻ってくるガルシア(我流史荒)、その妻である軽女=カルメンと女郎仲間、彼女に虜にされた男ドンホセ(干愚鈍)、彼を慕う弟分、江戸一喧嘩の強い勝小吉一家、彼の息子勝驎太郎(後の海舟)・・といった具合。物語の箱をひっくり返したような多彩さは、堅気とヤクザ、体制と反体制、幕府側と尊王側といった判りやすい図式には全く回収されない。人物の殆どがアウトロー的であり、彼らへの批判的視線(説教がましさ)を入れずして物語を語り切っている所が私などには新鮮だ。テーマは個々がそれぞれの道を生き切る事であり、それが呪われた宿命であれ個人の欲求であれ、行動こそ尊ばれ、正当化こそすれ後悔せず、道を全うした果ての死に際は潔い・・要は皆が皆格好良いんである。屈折の極みにして妖気漂うカルメンがやはり中心にあって迫力満点。その屈折したあり方が、終盤の本人の語りで明らかになり、屈折しているにも関わらず観客の理解する所となる。
     従ってこの芝居は「分かる話」だが、雰囲気は唐十郎を彷彿とさせた。舞台崩しも短調の音楽と照明の頻繁な変化による転換もないのだが、今回ガルシアに唐組の久保井研、他にも唐ゼミの役者が客演しているのは自然に思われた。
     産休で離れていたらしい女優が子を産んだ女として登場し、1歳位の赤子を抱いて出ていたが、劇団事情を知っているのだろう、少なくない客から自然拍手が起きていた。この赤子が天然に快活で子役ならぬ赤子役が存在するなら、十分タメを張っていたのが笑えた。

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    2016/02/22 05:51

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