ルルドの森(平成28年版) 公演情報 バンタムクラスステージ「ルルドの森(平成28年版)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    つながり、癒やし、こころを求めて
    いつものバンタム公演にある「画の美しさ」はそのままに
    連続殺人事件を追う刑事たちに軸を置いた実にエンタメ要素の多い作品である。
    エンタメではあるが舞台には緊張と美が必ず在り眼前に並べられた道具たちが背筋に冷たいものを這わせる。

    バンタム公演にしては小道具が多い印象。
    バンタムといえば、な椅子も多用されており、今回も場転を見せるスタイルながら完全な暗転もある。
    場転が多いのも初期作品の特徴か。(場転の多さ・場面の多さがより映像的な印象を見る者に与える)

    演劇である以上演劇の要素は当然多いのだが、
    起こったことをわりと時系列でそのまま見せてくれるので
    連続ドラマを見ているような気分にもなる(よくこの作品は「映画のよう」と評されるが、個人的にサスペンスといえばテレビドラマな印象)。

    刑事たちの立ち位置、性格などとてもわかりやすくえがかれているし話の筋もわかりやすい。
    二転三転する「追う相手」が観客にわかるように作られていて観客が「こうなるだろう」と予想する方向へ話が進む快感もある。
    それでいてラストがああなのだ。面白い。とても面白い。
    裏切られたようなラスト、でありながら、実は観客を裏切っていると言い切れるわけでもない。うまいラストだ。

    本作品は五度目の上演で、実に丁寧に練られた感がある。
    確かなキャスト陣で贅沢に作られた作品だった。

    パンフレットも見事。
    役柄をよく表現した見事な写真たちでした。
    対談が非常に興味深かったです。
    以下、ネタバレ欄にとりとめなく雑記。(今後の再演に備え、決定的なネタバレ部分は削除しました。)

    ネタバレBOX

    特筆すべきはあらすじにある通り扱われている事件が猟奇殺人事件ということだが「物」はあまり見せず、「言葉」で観客に想像させる表現。
    これが後半になると逆に「言葉」ではなく「物」を持ってくる。

    細川作品はある種「家族」が軸である。
    今回も父性と母性は大いに作中にあらわれる。

    三島と香乃子、マコトとメイ、あるいは黒船と菱見玲子もか、惹かれ合う描写を削ぎ落とした物語になっていることで、観客は納得できず状況を冷静に眺めてしまう状況になる気がする。
    作品に観客が入り込みすぎないようにしているようであり、ある種だましうちを仕掛けているのでもあり。なんにせよ、感情描写を抑えている部分がこの「ルルドの森」の気持ち悪さの一端であろう。

    終盤に行くにつれ、物語から「救済」「癒やし」を感じるようになる。
    「連れて行って」という台詞にある切なさがたまらない。
    最後の台詞も救済なのだろうと思うとわたしにはハッピーエンドに思えた。が、そこからの「彼女」の表情である。
    次の目的を得たという意志、のようにも、自分がとらわれているものからの解放は果たされなかったという怒り、のようにも取れる… きっとほかにも推論は出てくるだろう。
    こうやって見終わったあとにいろいろ想像がかきたてられる作品は良い作品だと思う。

    舞台装置。
    まさかあそこが動くとは。
    昭和レトロ感のある床に、くすんだ色の薔薇柄レース。良い。
    ただし見にくさが難点。「見せない演出」に細川さんのSさを感じた。笑
    もどかしい。

    音楽。
    いつもながら美しい。

    銃器、あれがないと始まらない!
    調子が悪いときがあったのか、ときどき光らないことがあったのが本当に残念。

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    2016/02/21 18:57

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