漂流劇 ひょっこりひょうたん島 公演情報 Bunkamura「漂流劇 ひょっこりひょうたん島」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    なんと言って良いのやら…
    昨年の上演発表後から色々あるわ、公演開始したらしたで酷評に近い、というかほぼ酷評の下馬評は目にしてた。
    表題の歌はよく知っているが、人形劇そのものは懐かしのテレビ番組やYouTubeなどで掻い摘まんで覚えている程度、井上ひさし氏の晩年に「この作品は死後の世界の話」という発言も、どこかで目にした。

    見た後は少し長いかなーとか、ここが松本の劇場だったら味わいが違ってたのかもなどと、祝日午前中の教育テレビ感を彷彿。
    テレビ原作に親しみがあって、お目当ての役者が歌い、なおかつ滑稽さとブラックファンタジー的な要素を期待していたら、どうしてこうなった?ということなのか。初期の東映マンガ祭り的少年少女のための(ってジャンルはないけど)井上作品の軽妙な文体を読んでた印象が強いせいか、この舞台は観る前から都合の良いように劇世界を思い描いて見ていたのかも、と自分の観劇姿勢も少し考えたりして。

    役者さんはイキイキと楽しげに演じ、明瞭でリズミカルに歌い上げる。当たり前か。
    ただ、コクーンシートで見た自分が言うのもなんだが、特設S席の座席設定はあまり意味はなかったような気がする。

    ネタバレBOX

    劇中、串田さん着ぐるみ着てよく動けるなー、と妙なところで感心。
    プロローグから始まり、8編の話、カーテンコールまでの場面構成。
    「漂流劇」と銘打っているためか、断片的なエピソードが8話あり、舞台上方の煙や光、爆発音などで話を区切っていく。
    脚本構成から各々の持ち味が見え「海賊とイス取りゲーム」での会話やり取りのナンセンスさはシティボーイズ風コントにも思えたが、そこから先はファンタジーとインテリジェンスを兼ね合わせた結果、井上色は控えめになり「存在の不確かな国際警察官」「さまざまな人の生息する無人島に漂着」の場面では串田氏のシューレアリズムが勝ってた感。
    博士が知恵を働かせ、こどもたちが力を合わせてドラゴンを作る「こどもたちと海賊の闘い」でのドラゴン製作過程は、これまで見てきた串田さんの舞台上のガラクタだらけの廃墟から何かを作り出す演出に思えてみてとれたが、闘い方は所詮、こどもの浅知恵。すぐにカラクリもばれ壊れてしまうが、ここら辺は井上さんの情動にも思えてくる。
    「みつからない宝探し」で盗賊含め、全員が懸命に探す宝箱は見つかるものの蓋を開ければ空振りばかり。絶望の空気が漂う中、ピストルを撃つ度に寿命が縮んで逝ったダンディを含む、舞台に放り出されていた死人や荷物が空高く上って行くが、あのモビールは子どもたちや漂流していた彼らの魂を表したもの、と思った。
    祝祭的な感慨もなく、終わった瞬間は、ああ、やっと終わったかと感じたが、大人の目で見るより子供の頃の童心に戻って見たほうが邪推もせず楽しめそうな舞台だった。
    嫌いにはなれないけど、もっとどうにかできなかったのか、と口惜しくなってしまった。

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    2016/02/08 01:09

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